欧州CL通信BACK NUMBER
ついに発見されたバルサ攻略の公式。
モウリーニョが作り上げた戦術を解く。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byKazuhito Yamada/Kaz Photography
posted2010/04/30 11:50
ボールは中央のシャビを経由して、右サイドを上がったダニエウ・アウベスの足元へと渡る。
アウベスは再び中央のシャビに戻し、今度は左サイドで待つペドロへと展開される。
そして数秒後、ボールは再び、まるでそれが決まり事であるかのように、中央のシャビの下へと戻っていく――。
チャンピオンズリーグ準決勝第2戦、バルセロナ対インテル。9万6千人を超える観客は、カンプノウでの90分間、こんな光景を一体何度見たことだろう。
試合を通じて、ボールは振り子のように、インテルのゴール前を、右に左に移動していった。
「やれることはやったし、全力で攻めたけれど、インテルはよく守っていた」
試合後のミックスゾーン。終了間際に華麗な得点を決めたピケは、どこかあきらめたような表情で肩を落としていた。
ボールを回しながら相手の穴を探すバルサと、自陣に引いて守備ブロックを組み、ボール奪取にすべてを捧げたインテル。1点勝負の末、決勝に駒を進めたのは後者だった。
横から攻め続けるバルサに、中央を完璧に守るインテル。
前半開始からバルセロナはボールを保持し、メッシやシャビがチャンスを窺う。
一方のインテルの策は第1戦と同じ。中央を固め、人数をかけてボールを奪取し、バルサ守備陣の裏のスペースに縦の1本のパスを送る――。
前半16分、メッシのドリブルを3人で囲んでボールを奪い、前線へ走るミリートへ一本で通したシーンに、彼らの典型的な狙いが表れていた。
“縦”のインテルと“横”のバルサのせめぎあい。
しかし前半28分のモッタの退場で、そのインテルのプランは変わることになる。
数的不利に立たされたインテル。モウリーニョはエトーを左のアウトサイドに置き、3-4-1-1のフォーメーションに切り替え、守備に徹することを指示。
一人減ったインテルだが、これによって守り切るという狙いが、より明確になった。
「あの退場がチームを団結させた」と試合後にルシオは語っている。
ボールポゼッション78%、パス成功率90%での敗北。
バルセロナのボールポゼッションは前半終了時には78%となった。
パス成功率は90%で、実に334本のパスを通した。一方のインテルはたった44本である。
しかしバルサがボールをキープし、ボールがピッチを横断する展開は、モウリーニョが予想していたものでもあった。この試合のインテルの守備戦術は、まさにバルセロナを止めるために準備されたものだ。
伊ガゼッタ・デッロ・スポルト紙は翌日の紙面で「この日、バルサ対策が発見された。2つの守備ブロックを構成してライン間のスペースを消すこと」と記している。