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ゴロとフライの比率「GB/FB Ratio」で、
松井秀喜とイチローの好不調を解読!
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKYODO
posted2010/05/06 10:30
4月26日のインディアンス戦では、メジャーリーグ通算1000本安打となる記録を達成した松井秀喜。指名打者での出場が多いとはいえ、レフトの守備も大過なくこなしている
エンゼルスに移籍した松井秀喜が、これまでのところ好調だ。
4月27日の試合が終わったところで(以下のデータはすべてこの日までのもの)、アメリカでは打者の指標として重視されているOPS(出塁率と長打率の和)が.871と、エンゼルスのなかではモラレス、アブレイユについで3番目の数字を残している。
.900を超えれば超一流打者とみなされるので、これまでのところ松井は十分に4番打者としての重責を果たしていると言えるだろう。
注目される指標、ゴロとフライの比率「GB/FB Ratio」とは?
もうひとつ注目したいのが、ゴロとフライの比率である。この数字は「GB/FB Ratio」と言って、打者の傾向、好不調の波を調べる際の指標に使われることが多い。
GBとはgroundball、ゴロのことで、FBはflyballのこと。フライ1本に対して、ゴロが何本打たれたかを示す数字である。
もしもゴロが100本、フライが100本だとしたらGB/FB 率は「1」となる。比率が1対1ということだ。
分かりやすいのは2008年、松井はゴロが136本、フライがちょうど100本だった。この時の松井のゴロとフライの比率は1.36だった。
では、数字をどのようにして考えるのか。いろいろな考え方があるのだが、松井のような本来はホームラン・バッターであればフライが多い方が好調だと考えられる。
反対にイチローのような野手の間を抜いていくヒットが多い選手は、ゴロの比率が高い。
ふたりの数字の比較をすると、とても興味深い数字が出てくることが分かった。
GB/FB | ゴロ% | フライ% | ホームラン | |
---|---|---|---|---|
2003 | 2.30 | 54.7 | 23.8 | 16 |
2004 | 1.03 | 40.9 | 39.9 | 31 |
2005 | 1.30 | 47.0 | 36.3 | 23 |
2006 | 0.89 | 39.1 | 43.7 | 8 |
2007 | 1.06 | 42.6 | 40.3 | 25 |
2008 | 1.36 | 46.9 | 34.5 | 9 |
2009 | 0.90 | 37.9 | 42.0 | 28 |
2010 | 0.58 | 29.2 | 50.8 | 4 |
GB/FB Ratio | 安打数 | |
---|---|---|
2002 | 2.59 | 208 |
2003 | 1.85 | 212 |
2004 | 3.55 | 262 |
2005 | 2.20 | 206 |
2006 | 1.83 | 224 |
2007 | 2.39 | 238 |
2008 | 2.54 | 213 |
2009 | 2.12 | 225 |
2010 | 1.61 | 25 |