日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
高校生とベテランを呼んだ深い意図。
国内組招集に見るザックの戦略とは?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshiya Kondo
posted2012/02/21 10:31
ザッケローニ監督は久保裕也に関して「何でも器用にこなせる現代的なアタッカー」と評した。磯村亮太や柴崎岳と並んで「協会としてもいずれ彼らは代表で重要な選手になるはずだと考えている」と語っている
26.52歳。
これはザックジャパン、2012年の初戦となるアイスランド戦(24日、大阪長居スタジアム)に招集されたメンバー25人の平均年齢だ。前回のブラジルW杯アジア地区3次予選タジキスタン、北朝鮮2連戦のメンバー平均が25.95歳。2連戦から3カ月経っていることを含め0.5歳ぐらいの差ならばさほど違和感を覚えることはない。
しかし今回と前回ではメンバー自体がガラリと変わっている。
前回は海外組を合わせたベストメンバーだったのに対して、アイスランド戦はアルベルト・ザッケローニ体制となって初めて国内でプレーする選手のみで戦う試合。かつ、ロンドン五輪最終予選を控えるU-23代表の主力を一人も招集していない。そういった状況で指揮官は久保裕也、磯村亮太、柴崎岳という18~20歳の若いプレーヤーを3人呼んだ。その一方で大久保嘉人、石川直宏ら“アラサー”の選手も招集した。U-23を除いて各世代から幅広くバランス良く集め、敢えてこの平均年齢に落ち着かせたのである。代表メンバー発表の記者会見においてザッケローニが残したいくつかの発言から、その戦略を検証してみたい。
サプライズは14年ぶりの「高校生A代表」久保裕也。
「今回の合宿には3つのポイントがある。1つめはウズベキスタン戦に向けて(オフ明けの)選手たちの試合勘を取り戻すこと、2つめは初招集の選手を手元に置いて見ることだ。そして3つめは若手を呼んで自分の目で見ることによって、彼らに対して将来的にチャンスがあるんだと伝えること」
会見に集まったメディアをまず驚かせたのが久保、磯村、柴崎の招集だった。久保、磯村の場合はU-23代表でも招集歴がない“飛び級”。特に久保は市川大祐以来、14年ぶりの「高校生A代表」だという。だが、ザッケローニはあくまで彼らを呼んだ最大の目的を「自分の間近に置いて見ることだ」と強調する。
「彼らには代表の雰囲気がどういうものかを感じてもらい、将来に向けて期待していることを感じさせたい。試合の流れに応じて出場する可能性はあるとは思うが、彼らを呼ぶ理由というのは今述べたとおり。以前、宇佐美を呼んだ状況と近い」
指揮官は昨年6月のキリンカップに19歳の宇佐美貴史を招集したものの、ペルー戦、チェコ戦ともに出場機会は与えなかった。ただ、A代表の雰囲気を感じさせただけで十分な効果はあったと言える。チェコ戦の後、宇佐美は「代表のスピードというものを経験できたし、多くのことを学べた。Jリーグに戻ったらもっと余裕を持ってプレーできるようになると思う」と手ごたえを述べていた。