日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
高校生とベテランを呼んだ深い意図。
国内組招集に見るザックの戦略とは?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshiya Kondo
posted2012/02/21 10:31
ザッケローニ監督は久保裕也に関して「何でも器用にこなせる現代的なアタッカー」と評した。磯村亮太や柴崎岳と並んで「協会としてもいずれ彼らは代表で重要な選手になるはずだと考えている」と語っている
若い3人の才能と将来性にザックは期待をかける。
20歳前後でA代表の空気を味わえるのは大きい。日本代表で10年にわたって背番号「10」を請け負った中村俊輔も1998年に19歳で初めてA代表に呼ばれた。そこからレベルアップに努め、2年後にA代表デビューを果たしている。日本のトッププレーヤーたちと一緒にトレーニングすることによって多大なる刺激を受け、A代表入りをモチベーションの一つとしたのだ。
ザッケローニは久保、磯村、柴崎の3人をいずれも「将来性が高い」と才能を買っている。2014年のブラジル本大会まであと2年あることを考え、“伸び”を促進するために今このタイミングが招集のチャンスと考えたのだろう。
30代の大久保、石川が担う役割はチームのバランサー。
そして今回のもうひとつのサプライズが大久保、石川の代表復帰だった。
香川真司はケガで離脱中、本田圭佑は実戦復帰したばかりと2列目が不足。加えてU-23世代のタレントも招集できない事情もある。世代交代を加速させてきた指揮官だけに20代なかばまでの選手をリストアップするかと思いきや、そうではなかった。“アラサー”の大久保、石川を初めて呼び入れたのだ。言うまでもなく大久保は南アフリカW杯で全試合に先発で出場するなど実績は十分。石川はW杯本大会メンバーにこそ漏れたものの、その力量は誰もが知るところだ。
30代にさしかかる経験豊富なプレーヤーを選出した理由について指揮官は会見でこう語った。
「私は常々、バランスという話をしている。若手も呼んでいるし、ベテランというか落ち着いた経験豊富な選手を入れることによって、彼らがチームとしてもバランスをもたらしてくれると考えた。また今回の試合は、非常に大切なチェックの場だ。代表チームの底上げを図るうえでどこまでできるのかを見極めるために、こういった選手たちを招集するに至った」
今回のメンバー選考から見えてくるのは、出てきたばかりの新星から呼んでこなかった経験豊富な選手まで指揮官が隈なく目を向けているということだ。チームの土台をつくった今、彼は門戸を広げようとしている。若手重視の姿勢は見えるものの、ベテランだからと言って年齢だけでブラジルへの道が閉ざされることはない。