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冬季五輪での過去の栄光が蘇るか!?
渡部暁斗のノルディック複合初優勝。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2012/02/15 10:30
ノルディック複合で初優勝を果たした、W杯総合ランク3位の渡部暁斗(中央)。日本勢の複合個人優勝は荻原健司、高橋大斗、河野孝典に続いて4人目で、2004年3月に2連勝した高橋大斗以来、日本勢8季ぶりの快挙。また、前半飛躍は一人だけ130メートルを越え、W杯55戦目で後半距離をトップで迎えるのは初めて
注目を集めてきたホープが、ついに真価を見せた。
2月5日、イタリア・バルディフィエメで行なわれたノルディック複合のワールドカップで、渡部暁斗が初優勝した。前半のジャンプで最長不倒の133.5mを飛んで首位に立つと、2位に20秒差をつけてスタートした後半のクロスカントリー(10km)で逃げ切ったのだ。
この大会にかぎらず、渡部は今シーズン、好調を続けてきた。昨年11月25日にフィンランド・クーサモで行なわれたワールドカップ開幕戦では自身最高の結果となる2位となり、翌日の第2戦でも3位。その後も安定した成績を残し、優勝も近いと思われていたが、期待にこたえた試合だった。
日本勢では、2004年3月の高橋大斗以来、実に8シーズンぶりの優勝である。
ノルディック複合で隆盛を極めた日本の凋落と再興。
ノルディック複合と言えば、'90年代前半から半ばすぎにかけて、日本が圧倒的な強さを誇った競技である。1992年のアルベールビル、1994年のリレハンメル五輪の団体で、日本は2大会連続の金メダルを獲得している。世界選手権でも、1993年から1997年の3大会で、団体で2つ、個人で2つの金メダルを手にした。
ところが日本のあまりの強さに、国際スキー連盟は、日本が得意としていたジャンプのポイントの比率を下げ、クロスカントリーを重視するルール変更を何度も実施。海外勢もジャンプの強化を図り、日本のアドバンテージは失われていった。
その後、個人はふた桁順位が当たり前、団体でも表彰台ははるか遠いものになった。
その上、強化費もままならない苦境にも陥った。
それでも世界の上位に食らいつこうとしてきた。海外からコーチを呼ぶなどして、苦戦してきたクロスカントリーの強化に取り組み、長期的な視点から若い選手を抜擢し、資金をやりくりしては海外遠征をさせて経験を積ませた。