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元プロ野球選手が語る濃密な技術論。
「野球指導者講習会」徹底レポート! 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byJunji Koseki

posted2012/02/11 08:01

元プロ野球選手が語る濃密な技術論。「野球指導者講習会」徹底レポート!<Number Web> photograph by Junji Koseki

投手講座を担当した元ヤクルトの右腕エース・川崎憲次郎氏は、基本動作の重要性を丁寧に教えていた

山本氏はボークぎりぎりの「卑怯」な牽制球を教授。

 今回の実技指導で最も感銘を受けたのは山本和行氏の講座だ。

「相手が塁を盗むという卑怯なことをするんだから、こっちも卑怯なことをしてもいいんだ」と笑わせ、まず一塁牽制のボークの動きをやって見せる。

「ほとんどの左腕の一塁牽制は投げる前から見破られている」と言い、「ホーム(打者)に向かって投げるつもりが大事。ホームに投げる途中で『あっ、でも一塁に投げよう』という感じで牽制する」と、微妙な感覚を絶妙な語り口でわからせてくれる。

 一塁牽制の動きは、ステップする右足を最初はホーム方向に踏み出してみせる。もちろんこれはボークなので、少しずつ右足を一塁方向に出していき、「どこらへんまでホーム寄りに右足を出したらボークなのか審判に聞きなさい」と助言もしていた。

 次は三塁への牽制。「ステップする足が地面に着いたらすぐ投げなさい」と言い、「これはバントをさばいたあとのスローイングも一緒だよ」と補足。

「マウンドの上から投げるように足を上げ、体重移動をしてから投げるピッチャーがいるけど、走塁は30センチでアウト/セーフが決まるので、すぐ投げないとダメ」と細かい。三塁牽制ではセットポジションのときの一塁に向けた顔をジャンプして一瞬にして三塁に向け、向けたと同時にボールを投げる動作をしつこいくらい生徒役の大学生にやらせていた。

 この生徒役・実籾輝幸くん(千葉工大の左腕投手)に、今までジャンプして投げる練習をしたことがある? と聞くと「あります」と答え、「そのときは自分に合わないと思って続けませんでした。でも今度はやってみます」と意欲的だった。

サッカーの相手を抜く動きで捕球術を説明した仁志氏。

 山本氏以外では仁志氏の講座もよかった。生徒役の大学生とサッカーの相手を抜く動き(捕球に関係する動き)を見せてくれたが、全然違う。ペットの猫と野生のイリオモテヤマネコくらい動きに差があるのだ。

◇ゴロ捕りの一歩めは打球方向の足から動く
◇体勢は「静から動」は難しいので、軽く踵を浮かしておく
◇ショートバウンドは「止める」という意識はダメ。「捕る」という意識を持つ
◇打球は正面から捕りにいくと遠近感、スピード、高さがわからないので、少し膨らみながら入っていく
◇加速して捕りにいく。スローイングがスムーズになるから……等々。

 この講習会の前に行った、『2012年版 スカウティングレポート』(廣済堂出版)の巻頭対談で仁志氏の話を聞いていたので、だいたいの内容は知っていた。しかし、話に野生の獣のような動きが加わり、理屈を実践してくれたので、まったく飽きなかった。

【次ページ】 高い技術レベルを目指すことが野球の進歩につながる。

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