プロ野球亭日乗BACK NUMBER
統一球の真芯を右方向に強く打て!
坂本勇人の打撃が握る巨人の命運。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byTamon Matsuzono
posted2012/02/07 10:30
2010年の31本から、昨季は16本とホームラン数も激減。オフにはプロ入り初の減俸を経験した坂本は、実り多きキャンプを過ごせるか
「引っ張ってヒットにするという感覚が身についた」
「どういう風にしてできるようになったのか、理由は分からない。いきなり、引っ張ってヒットにするという感覚が身についたんです。理由としてはプロに入ってトレーニングをして、体幹が強くなったというのはあるかもしれません。もともと腰痛持ちで、腹筋とかを意識してやっていたら体が変わりました。体重は変わらないけど、体の内側が太くなっている。今は守備をしていても、走っていても感じる。それでバッティングにも変化が出たのかもしれません」
そうしてこの年、打率3割6厘をマークした。
順風満帆だった。
三遊間を抜けていた外角球がボテボテの内野ゴロに。
だが、坂本の帆を大きく膨らませていた風が、昨年、急に凪いでしまった。
今まで三遊間に鋭い打球となっていた外角球が、ボテボテのゴロになった。今までと同じ感覚、同じ打ち方だが、打球の質が変わってしまった。
理由として考えられるとすれば、やはり統一球にあるように思える。
「きちっと打たないとボールが飛ばない。ひとことで言えば、それに尽きる」
こう言うのは吉村禎章前打撃コーチだった。
「ボールの芯を捕まえて、打ち抜く。それでも飛距離は2、3m違った。ただ、こすったり、引っかけたり、きちっとボールの芯を打ち抜けないと、打球スピードはかなり落ちるし、飛距離も5mとか半端じゃないぐらいに飛ばなくなる」
坂本の場合は、内角球は体の回転で芯を打ち抜く技術があるので、極端な影響はなかったはずだ。しかし、外角球はどうしても引っかけて強引に左方向に運ぶために、打球の初速も遅くなる。またこれまで三遊間のヒットゾーンに持っていけていた打球が詰まって捕球されるなど、微妙な影響が出たのだろう。
それが昨年の2割6分2厘と1軍に定着した2008年以来の低い打率の要因だったわけだ。
「右中間に引っ張るという感覚」が重要と原監督は説く。
きっちりボールの芯を打ち抜いて、右方向に強い打球を打てるようになるか――統一球への坂本のテーマはここにあるはずだ。
これは右打者の外角球への対応の基本でもある。さらに、ただ当てただけではダメな統一球では、よりこの基本の徹底が求められるということだ。
「外角球を右方向に流すのではなく、しっかりと捕まえて、右中間に引っ張るという感覚を身につけること。そうすれば統一球でも結果を残せるはず」
坂本の師でもある原辰徳監督の指摘だ。
昨年のキャンプで、坂本はこの右方向の打球を意識的に練習していた。