プロ野球亭日乗BACK NUMBER
統一球の真芯を右方向に強く打て!
坂本勇人の打撃が握る巨人の命運。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byTamon Matsuzono
posted2012/02/07 10:30
2010年の31本から、昨季は16本とホームラン数も激減。オフにはプロ入り初の減俸を経験した坂本は、実り多きキャンプを過ごせるか
久々の巨大補強が話題となった巨人が2月1日、宮崎でキャンプをスタートした。
ソフトバンクから杉内俊哉、D・J・ホールトン両投手に、横浜から村田修一内野手を獲得。新外国人もクローザー候補のスコット・マシソン投手、ジョン・ボウカー外野手の二人が加わった。今キャンプでは、当然、こうした新戦力に目が向けられているが、実は今年の巨人の命運を握る選手を一人、挙げるとしたら坂本勇人内野手だと思っている。
昨年の巨人の敗因は、一にも二にも打線の得点力低下にあった。
チーム打率2割4分3厘は前年の2割6分6厘から2分以上も急落。チーム本塁打数108本に至っては、一昨年の226本から118本減少と半減以上の落ち込みようだった。
これだけ極端な打線の低迷の理由は明白だ。
昨年から導入された統一球、いわゆる飛ばないボールのせいだった。
巨人でもベテランの小笠原道大内野手や横浜に移籍したアレックス・ラミレス外野手なども軒並み数字を落としている。どの選手も多かれ少なかれ、この統一球の影響は受けているが、中でもこのボールへの適応に最も苦労してきたのが坂本なのだ。
プロ3年目で体得した外角低めのボールの攻略法。
理由は坂本のバッティングにある。
坂本の打者としての一番の特性は、天性の内角打ちにある。
コンパクトに腕をたたんで、鋭い腰の回転でボールを強く叩ける。この内角打ちのスイングは教えられたものではない。高校時代から自然と身についてやってきたものだった。
プロに入っても、多くの打者が苦手にする内角球を、この技術で苦もなく打ち返した。この天才型の打撃技術が、坂本をプロ2年目から巨人のレギュラーに押し上げた要因だったわけだが、それだけで生きていけるほど甘くないのは言うまでもない。
もちろん、進化があったのだ。
それが苦手の外角、特に外の低めの球を安打にできるようになったことだった。
「3年目に低いボールを引っかけて拾えるようになったのが変化でした」
坂本の言葉だ。
「それまではそういうボールにはバットを合わせるだけでショートゴロとかになっていた。それを体勢が崩されても、拾って、振り切っちゃって、引っ張れるようになった」
2009年のことだった。