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なぜ卓球は小学生でも活躍できる?
日本卓球界独特の強化体制を検証。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byHiroyuki Nakamura
posted2012/01/30 10:30
卓球全日本選手権・女子シングルス4回戦では、大学生相手に勝利した小学6年生の加藤美優。次戦は石川佳純に敗れたものの、前回女王を本気にさせ、1セットを奪うなど健闘した
1月17日から22日まで東京体育館で行なわれた卓球の全日本選手権は、男子シングルスでは6連覇を狙った水谷隼を高校生の吉村真晴が破り初優勝、女子シングルスでも福原愛が初優勝を飾るなど、話題の多い大会となった。
とりわけ、小学生の活躍が目立った大会でもあった。
女子では、小学6年生の加藤美優が5回戦に進出。石川佳純に敗れたものの、女子の小学生では、2000年の福原愛の3勝を超える1大会4勝の最多勝利を達成した。
小学5年生の平野美宇は一般の部で3回戦に進み、高校2年生以下を対象としたジュニアの部では、福原以来13大会ぶりとなる準優勝を遂げた。平野と同じく小学5年生の伊藤美誠も、シニアで3回戦に進出を果たしている。
さらに男子でも、小学6年生の出雲卓斗が1回戦で高校生を倒し、2回戦で大学生に勝利。小学生が同大会で勝利するのは史上初のことだ。
身長の低さが武器になることも小学生選手の追い風に!?
今大会の女子シングルスで初優勝した福原が小学生のころから活躍したのを皮切りに、若い選手、特にこの数年は小学生選手の台頭が目立つようになっている。
そこで、あらためてクローズアップされるのが、卓球では他の競技では考えられないほど小学生がシニアの選手に交ざって活躍できるのはなぜかということだ。
以前、日本オリンピック委員会による選手育成事業「エリートアカデミー」の卓球の指導陣、他の場所で育成にあたる人々に聞いたときに共通していたのが、まずは競技の特性だ。
一般に、シニアとジュニアの対戦で大きなハンディとなるのは体力、特にパワーだ。だが、卓球のボールは3グラムに満たない軽さであるため、速いボールを打つのに腕力がそれほど大きく影響はしない。相手が返しにくい回転のあるボールを打つためには筋力が大切だが、男子に比べ、女子は年齢による筋力の差が大きくない。
身長の高低はどうか。
卓球はボールを低い視点で捉えられる方がよいことから、身長の低さはメリットとなる。身長に伴うリーチの差はデメリットだが、いずれにせよ、身長の高低でいちがいに有利不利は決まらない。
国内のトップクラスや国際大会で上位選手と戦うには筋力も問われるし、技術も差となって表れる。とはいえ、年齢によるハンディが少ないという特性があって、卓球では小学生が台頭しやすいのである。