MLB東奔西走BACK NUMBER
青木宣親と川崎宗則が打つ布石。
メジャー移籍新時代は始まるのか?
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byNaoya Sanuki
posted2012/01/23 10:30
WBCのプレー中、イチローと言葉を交わす青木宣親。メジャーで数々の伝説を作ったイチローの後に続けるか?
日本人投手たちは“ゼロからのスタート”で挑み続けた。
もう一度日本人メジャー選手の歴史を振り返ってみよう。
1995年の野茂英雄氏から当時の挑戦者たちは、ほとんどが“ゼロからのスタート”だった。まだメジャーがストライキ中だった野茂は、ドジャースとマイナー契約からスタートし、ストライキ明けにメジャー契約を結んでも契約金を除けば3年目まで年俸は100万ドル未満だった。
長谷川滋利氏も4年目まで年俸は100万ドル以下で、日本ではほとんど経験のなかった中継ぎ投手として自分の地位を築いていった。また吉井理人氏も先発投手の座も確約されていないにもかかわらず、巨人からの複数年契約を蹴ってメッツと1年契約を結んでいる。そういった低評価を覆し彼らが活躍してくれたからこそ、その後、日本人投手が高く評価されるようになったわけだ。
一方で伊良部秀輝氏や井川慶投手のようにチームの期待に応えられなかった選手もおり、その評価が落ちたりもした。しかし、その後も日本人投手たちは“ゼロからのスタート”に屈せずメジャー挑戦を続けた。
最近では斎藤隆投手、高橋尚成投手、建山義紀投手がマイナー契約1年目からメジャー昇格を決め、その存在感を思う存分に示している。また、故障を克服し、中継ぎ投手として好投を続けた上原浩治投手も日本人投手の価値を再浮上させた1人だろう。だからこそ現在日本球界随一のダルビッシュにあれだけの注目が集まったのだ。
イチロー以外は評価されない日本人野手の存在。
野手はどうだろう。
日本人野手第一号としてイチロー選手が2001年に衝撃的なデビューを飾って以来、他の日本人野手に対する期待までもうなぎ登りだった。
その後、メジャーの期待に応えるように続々と日本人野手たちが好条件でメジャー移籍を果たした。だが、イチローという稀代の名プレーヤーが基準になるという不運があったとはいえ、長期にわたってチームが期待する通りの活躍をする野手は結局現れなかった。
もちろん井口資仁選手、松井稼頭央選手、岩村明憲選手のように主力選手としてワールドシリーズ出場を果たした選手もいた。しかし、彼らは様々な理由で短い期間でメジャーを去っていき、松井秀喜選手にしても故障のためここ数年はチームが求めている活躍ができているとは言い難い状態に陥っている。
これらのことを考えると……日本人野手の評価は、現在が間違いなくどん底だろう。