MLB東奔西走BACK NUMBER
LA地元記者による松井秀喜の評価。
ノモ、イシイ、サイトウとどう違う?
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2010/04/04 08:00
推定年棒600万ドルの単年契約を結んだ松井。ソーシア監督直々に、守備でのプレーを保障したという経緯もあって入団した
オープン戦も残りわずかとなり、2010年シーズンの開幕が目前に迫った現在、今年もフロリダでキャンプ取材を続けている。キャンプ開始当初は、記録的寒波がフロリダを襲い各チームともに難しい調整を強いられたが、後半から天気も回復し、まさに“終わりよければすべてよし”といったところではないだろうか。
今回はアストロズの松井稼頭央選手を中心に、レッドソックスの松坂投手、岡島投手以外、フロリダにいるすべての日本人選手を取材させてもらったが、キャンプを通じて感じた印象を素直に言葉に表すと……「閑散」の二文字に尽きるように思う。昨年までとはうって変わり、日本人報道陣の多くがフロリダから姿を消してしまったのだ。
自分が取材に行き一番多く日本人記者が集まったところでも、松井稼頭央選手と岩村選手の日本人対決が実現した時の5人が最高だったように思う。その理由はいうまでもなく、“1人の男”が大量の報道陣を引き連れアリゾナへ大陸横断してしまったからだ。
メジャー8年目で新天地エンゼルスに移籍した松井秀喜選手に対する世の中の関心の高さを、アリゾナから遠く離れたフロリダで痛感させられた次第だ。
松井のフランクな対応に地元マスコミは高評価を。
現地での過熱ぶりは日本の報道を見るまでもなく、米国の報道だけでも十分に窺い知ることができた。昨年はヤンキースに次ぎア・リーグ2位の観客動員を記録したほどの人気を誇るエンゼルスではあるが、地元の取材体制はヤンキースとは比較にならないほど手薄だ。昨今の経済悪化で定期的に出張取材をする報道陣が激減し、昨年は遠征に同行する記者の数はMLB.comを含め3人しかいない状況だった。そんな状況下で、日本人報道陣が大挙して“襲来”したのだから、エンゼルスの地元紙は連日のように驚嘆とともに松井選手と日本人報道陣の様子を報じ続けた。
そんな地元番記者の1人が、「オレンジ・カウンティ・レジスター」紙のビル・プランケット記者だ。彼はドジャース番記者時代、我々とともに野茂投手、石井投手、斎藤投手の取材経験を持つ人物なのだが、ドジャース3投手とは比較にならない報道陣に囲まれながらも無難に応対している松井選手に対し、即座に好印象を抱いたようだ。先日自分の質問に答え、以下のようなメールを返信してくれた。
「マツイを含め、ノモ、イシイ、サイトウと、すべて違った個性を有していたと思う。ノモは取材陣に対しては完全に事務的で、たぶん彼の笑ったところを見たことがないように記憶する。反対にイシイとサイトウは接しやすく、私に対しても冗談を言ったり野球以外のプライベートな話をしてくれた。
マツイは、その中間に位置するように思う。事務的である一方で、メディアに対して非常に友好的だ。私が覚えた日本語でジョークを交わしたこともある。それ以上に我々米国人記者にとって感心させられたのは、あれだけの大勢の日本人報道陣に四六時中追いかけ回されながら、見事に応対していることだ。クラブハウスでも他の選手たちにまったく混乱をもたらしていない」