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ダルビッシュよ、開幕から頑張るな!?
メジャーで成功する意外な秘訣とは。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2011/12/26 10:30
ダルビッシュ有の独占交渉権は、ア・リーグ西地区のレンジャーズが獲得。契約に至れば、同地区マリナーズのイチローとの直接対決も実現する
タフなメジャーを乗り切る秘訣はスロースタートにあり。
要は4月にトップギアに入ると、そこを頂点に5月、6月と調子は下降していく。逆に4月をゆっくりとスタートできれば、次第に調子を上げていって好調が持続できる時間が長い傾向があり、トータルでは好結果に結びつきやすいということなのである。
これはほぼ6カ月で162試合を消化し、しかも時差と長距離移動があってナイターとデーゲームが混在するという、メジャーのハードスケジュールを乗り切るための一つの知恵なのである。
以前にこのコラムで「メジャーで成功するためには、技術はもちろんだが、それとともにコンディショニングが大切で、体の強さが要求される」という趣旨の原稿を書いたことがある。
そのコンディション維持の知恵として、主力級のメジャーリーガーたちは決して開幕に照準を合わせてキャンプで調整はしない。ゆっくりとなだらかな昇りのカーブを描いてシーズンに突入して、そのまま少しずつ上げていくことが、結果的には好成績を残す方法論だと知っているわけだった。
オープン戦から実力を査定される日本人選手の苦悩。
そしてこれがメジャーで成功する方法論だとすると、日本人選手は厳しいのである。
「とにかく早く結果を残さないと使ってもらえないからね」
こう言っていたのは今季、オークランド・アスレチックスでプレーした松井秀喜外野手だった。キャンプからオープン戦と結果を残さなければ、試合出場のチャンスが減ってしまう。出場チャンスが少なくなれば、必然的にアピールのチャンスも減る。定位置を獲得することもできなくなって、たまに試合に出ても結果を残せなくなっていく。この悪循環が続くからだった。
あれだけ実績のあった松井でも、そういう現実に直面している。
昨年、ミネソタ・ツインズに移籍した西岡剛内野手も、オープン戦で3割4分5厘のハイアベレージを残して二塁のポジションを獲得したが、開幕直後に左すねを骨折する不運に見舞われ、復帰後は定位置確保がならなかった。だから来年もまた、キャンプから激しいレギュラー争いを演じて、オープン戦に向けてトップギアで調子を上げていかなければならない。そうすると……。
これが来年、初めてメジャーの世界に足を踏み入れる選手はもっと大変になるわけだ。