プレミアリーグの時間BACK NUMBER
激動のプレミアリーグ監督事情。
ファンの声で指揮官の首が飛ぶ!!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2011/12/06 11:00
攻撃的な試合を見せながらも、ビッグクラブとの接戦をことごとく競り負け遅れを見せるチェルシーのビラスボアス。結果を出すために与えられた時間はそう長くはないが
なぜブラックバーンのオーナーは監督を代えないのか?
延命の理由は後任候補の不在しか考えられない。インド人オーナーは、大規模な資金注入を約束しておきながら、移籍市場では選手売却を優先。軍資金となるべきテレビ放映権収入は、銀行融資の抵当に入れられている。戦力面でも資金力面でも魅力の乏しい現状では、名のある指揮官を呼び寄せることは不可能に近い。「ファンが望んでいる」として交代に踏み切ったところで、2流の後任の下で低迷が続けば、次に非難の矛先を向けられるのは経営者自身だ。
観客が極端に少ないウィガンでは監督への抗議も無いようで……。
昨季に続いてブラックバーンと最下位を争っているウィガンは、伝統的なサポートの弱さが、ロベルト・マルティネス監督に幸いしている。
ラグビーの町を本拠とするクラブは、例年、観客動員数でも最下位を争う。今季も、13試合で平均17000人台という数字は、スタジアムの最大収容人数が19000人台のQPRに次ぐワースト2だ。ウィガンが数万人の熱狂的なファンを集めるクラブであれば、「トップ10入り」の夢を掲げながらも、残留争いを繰り返すマルティネスに対する不満のデシベルが増し、「彼をクビにするなら私も辞める」と言う英国人オーナーが、早々に指揮官と共に去っても不思議ではない。
サポーターに守られていると言えば、アーセン・ベンゲル。
アーセナルの知将は、今季序盤でメディアに最も叩かれた監督だ。第3節でマンチェスターUに大敗(2-8)すると、大衆紙の見出しには『バイバイ・アーセン』との文字が躍った。大物を獲らず、守備の改善も中途半端に思われたベテラン監督には、「意固地」、「盲目」といった表現も用いられた。
「アーセン・ベンゲルしかいない!」と叫び、ファンがベンゲルを守る。
それでも、ファンがベンゲルに牙を剥くことはなかった。一部では「交代の潮時」との声も聞かれたが、アウェイゲームにも通うコアなサポーターたちは、スタンドで「アーセン・ベンゲルしかいない!」と声を上げ、その忠誠心が対戦相手の監督連中からも評価された。降格圏付近にまで落ちていた中でファンによる大々的な非難があれば、“ベンゲル信者”を自認するオーナーのスタン・クロンケでさえ、米国スポーツ界で「ファンありき」を知る身としては、ベンゲル続投論を強調してばかりはいられなかっただろう。