プレミアリーグの時間BACK NUMBER
激動のプレミアリーグ監督事情。
ファンの声で指揮官の首が飛ぶ!!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2011/12/06 11:00
攻撃的な試合を見せながらも、ビッグクラブとの接戦をことごとく競り負け遅れを見せるチェルシーのビラスボアス。結果を出すために与えられた時間はそう長くはないが
アーセナルが立ち直ると、チェルシーが次の獲物に。
アーセナルの立ち直りと引き換えにメディアの標的となったのが、チェルシーを率いるアンドレ・ビラスボアスだ。
ホームで2連敗となった第12節リバプール戦(1-2)後には、首切りを待つ「死刑囚」に例えられた。だが、サポーターは34歳の新監督に寛容だ。メディアでは弱点として取り沙汰される若さが味方しているのだろう。また、今季初黒星となった第5節マンU戦(1-3)では優勢に戦い、まさかの2敗目となった第9節QPR戦(0-1)では9人になっても攻め続けるなど、敗戦の前向きな内容がリーグ戦14試合4敗の心痛を和らげている。
解説者となったガリー・ネビルに、攻撃好きなCBのダビド・ルイスを「プレステで小学生に操られているDFのようだ」とけなされて、「愚かな視点だ」と切り捨てるなど、ストレートな発言と強気な態度も好評だ。
スタンフォード・ブリッジでは、開幕以来、ビラスボアスを讃えるチャントは聞かれないが、4年前のジョゼ・モウリーニョ(現R・マドリー)退任以来、後任への抗議を意味するモウリーニョ・コールも起こってはいない。“ワンマン・オーナー”として知られるロマン・アブラモビッチに限っては、観衆の声に影響されるはずなどないが、モウリーニョ時代からの主力選手たちは、元監督の名が連呼されるホームゲームを重ねれば、現監督への不安を募らせかねない。ジョン・テリーらのベテラン勢は、オーナーとの距離も近い。W杯優勝監督のフィル・スコラーリも、CL優勝監督のカルロ・アンチェロッティも、解任劇の裏には、選手の発言力があったとされる。
経験不足を承知で招いたビラスボアスの首を切れないアブラモビッチ。
一方、国内では優勝戦線から後退し続け、CLではアブラモビッチ体制で初のグループステージ敗退となったとしても、ビラスボアスの即刻解任はないとも伝えられている。
オーナーにすれば、スコラーリとアンチェロッティの解雇に際しては、ベテラン監督が期待を裏切ったという表向きの理由があった。ところが、経験不足を承知で呼び寄せたビラスボアスの首をいきなり切れば、早々に自身の判断ミスを認めるようなものだ。