オフサイド・トリップBACK NUMBER
袋小路に追い詰められた名将の矜持。
ベンゲルとアーセナルは復活するか?
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byGetty Images
posted2011/10/01 08:02
「(辞任するのではないかとの声に対し)噂などには惑わされないつもりだ。これからチームを再建する」と宣言したベンゲル。クラブのチーフエグゼクティブであるイヴァン・ガジディスは「(監督解任は)考えていません。突然彼が無能な監督になるということはないのですから」とベンゲルの更迭が無いことをコメントしている
「そこそこの成績」を収め続けられたことが徒となった。
続く'09-'10、'10-'11の2シーズンは、リバプールの没落が話題になったためにアーセナルにはさほど関心が払われなかったが、やはり冬の移籍市場で無理やりアルシャービンを獲得した'08-'09シーズン頃から、クラブはすでに危険水域に入っていたとみていいだろう。現にその後アーセナルでは、とっくに袂を分かったはずのレーマンやキャンベルが呼び戻されるといった信じがたい出来事まで起きている。
にもかかわらず対策が講じられぬまま、チーム事情がここまで悪化してしまったのはリバプールやアストンビラの自滅、マンCの練度不足などによって、「そこそこの成績」を収め続けられたのが大きいように思われる。ベンゲルは安堵の溜息をついていたかもしれないが、結果的にはプレミア4位という成績を維持できてしまったことが、逆に今、重い負債となって回ってきたともいえる。
さて、ベンゲルとアーセナルはこれからどうなるのか。
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さしあたって今シーズンは、それこそ「なんとかする」しかない。さすがに「アーセナル」という現在の名称になってから、2部に1度も落ちたことがないという伝統を失うところまではいかないと思うが、率直に言えば、ELの予選圏内にでも食い込めれば御の字ではないだろうか。
「次のアーセナル」を示せるのはベンゲルしかいない。
それよりも重要なのは、来シーズン以降だ。
イギリスのメディアには、ベンゲルが辞任するのではないかと書きたてているところも多い。だがそのような方法はなんの解決にもならない。状況をさらに悪化させるだけである。ましてや、将来的にベンゲルが勇退した後の「次のアーセナル」をどうするかというテーマは、ファーガソン退任後の「次のマンU」をどうするかという問題よりもはるかに難しい。
たとえばマンUならば、ファーガソンの次にモウリーニョが来るというシナリオは十分に成立し得る。だがアーセナルの場合は異なる。人選を誤ればベンゲルが苦労して築きあげた「いいサッカーをするチーム」という金看板を降ろすことになってしまう。
かといってバルサのOBなどを監督に据えたのでは、「プチバルサ」と揶揄する人々がますます増長する。個人的には、ベルカンプ(現アヤックスコーチ)あたりが修行を積み、北ロンドンに戻ってくるというシナリオを夢見るが、「次のアーセナル」については当のベンゲルが誰よりも頭を悩ませているはずだ。