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袋小路に追い詰められた名将の矜持。
ベンゲルとアーセナルは復活するか? 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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photograph byGetty Images

posted2011/10/01 08:02

袋小路に追い詰められた名将の矜持。ベンゲルとアーセナルは復活するか?<Number Web> photograph by Getty Images

「(辞任するのではないかとの声に対し)噂などには惑わされないつもりだ。これからチームを再建する」と宣言したベンゲル。クラブのチーフエグゼクティブであるイヴァン・ガジディスは「(監督解任は)考えていません。突然彼が無能な監督になるということはないのですから」とベンゲルの更迭が無いことをコメントしている

財政面の負担や主力放出だけが原因とは考えられない。

 どちらも相応に核心は突いているが、それでも2つの疑問は残る。

 ひとつ目は、新スタジアムの建設が財政面での負担になったという指摘だ。

 21世紀に入ってからアーセナルが最も成功を収めたのが、プレミアで無敗優勝を飾った'03-'04シーズンだったことは間違いない。だがタイトルこそ獲れなかったものの、新スタジアムに移籍した2年目の'07-'08シーズン、アーセナルはサッカー関係者の誰もが刮目する、すばらしいサッカーを披露している。むろんタイムラグはあるし、補強の失敗はボディーブローのように後々効いてくるものだが、これでは少し計算が合わない。

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 ふたつ目は、ベンゲルが自分の方法論に酔ってしまったにせよ、さすがにセスクのような大黒柱抜きではチームが成り立たなくなることなど、わからなかったはずがないという素朴な疑問だ。

 したがってアーセナルの問題をより深く考えるには、「どこでボタンを掛け違ってしまったのか」を探ることも大事になる。

かつては主力が離脱しても若手が台頭していたが……。

 アーセナルでビッグネームの離脱が始まったのは、2005年の夏にビエラがユベントスに移籍してからだった。だがこの時には'05-'06シーズンにCLで準優勝するなど、ベンゲルはかろうじて面目を保っている。またビエラに代わってセスクが台頭するなど、中盤の穴をしっかりと埋めることもできた。

 しかし、その後アーセナルではピレス、アンリ、フラミニと、毎年夏が来るたびに主力クラスの選手が必ず離脱するようになっていく。ベンゲルもロシツキーやウォルコットなどを補強していったが、年々チームのスケールが小さくなっていった感は否めない。

 縮小する一方のチームに、さすがにこのままでは危ないと声高に危機が叫ばれたのが'08-'09シーズンの末である。同時期、著者はNumber Webで「ベンゲルとアーセナルの『死に至る病』」という原稿を書いた。内容は、戦力低下が指摘されても頑なに大型補強をしようとしないベンゲルに対して、サポーターばかりか選手からも警鐘が鳴らされ始めたというものだった。

【次ページ】 「そこそこの成績」を収め続けられたことが徒となった。

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