濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
アイドルが「冬の時代」を吹き飛ばす!?
格闘文化の最新型“ももクロ”の魅力。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySTARDUST PROMOTION
posted2011/08/02 10:30
ももいろクローバーZはメンバー5人で構成される。写真前列左から、佐々木彩夏、百田夏菜子、玉井詩織。後列左から有安杏果、高城れに
ワゴン車の地方巡業など、興行形態まで似ている!?
ももクロにとってのプロレス・格闘技は“ネタ”にとどまらない。運営方針そのものが“闘い”ということになる。活動のスタートは路上ライブ。デビューシングルのキャンペーンでは全国のヤマダ電機で104公演を行なっている。移動はメンバー全員が詰め込まれたワゴン車。眠るのも車の中だった。
完全な叩き上げ。厳しく、恵まれない環境の中でメンバーは鍛えられ、その姿がファンの思い入れを強いものにした。マネージャーの川上アキラ氏は、雑誌『クイック・ジャパン』のインタビューでこう語っている。
「自分がプロレス好きなので、インディペンデントの団体が路上からでかくなっていくというのはファンの人と気持ちが共有できるんじゃないかと」
プロレスファンがインディー団体の成長を見守り、格闘技ファンが世間的には無名のファイターのタイトルマッチにも熱い視線を送るのと同じように、ファンはももクロとストーリーを共有し、感情移入しているのだ。
ももクロで再確認する、プロレス・格闘技の秘めたる魅力。
そして彼女たちは、ステージ上で全力のパフォーマンスを披露してみせる。さながら“誰が見ても分かる壮絶な打ち合い”だ。7月3日に行なわれたZepp Tokyoでのライブは3回公演、トータル64曲。しかも、ももクロの振り付けは激しいものが多く、えびぞりジャンプをはじめアクロバティックな動きも組み込まれている。バックステージにはマッサージルームが設けられ、スポーツトレーナーが体力の限界に挑むメンバーの身体をケア。舞台演出を担当する佐々木敦規氏(K-1の映像も手がけている)のツイッターによると、「舞台裏はワンデイトーナメントでおなじみのK-1グランプリのそれとまったく同じ」だったという。そこまでやったら、観客が圧倒されないわけがない。
ももクロに魅力があるということは、格闘技にも魅力があるということだ。そういっても大げさではないだろう。泥臭いからこそ胸を打つストーリー。全力を出し尽くすことで生まれる迫力と説得力。
「冬の時代」という誤解に嫌気がさしたら、格闘技ファンや関係者はももいろクローバーZを見るといい。“格闘文化の最新型”から、自分たちが愛するジャンルが本来どれだけの力を持っているか、再確認できるはずだ。