濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
アイドルが「冬の時代」を吹き飛ばす!?
格闘文化の最新型“ももクロ”の魅力。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySTARDUST PROMOTION
posted2011/08/02 10:30
ももいろクローバーZはメンバー5人で構成される。写真前列左から、佐々木彩夏、百田夏菜子、玉井詩織。後列左から有安杏果、高城れに
「格闘技界は、冬の時代を迎えている」
何度も繰り返されてきた常套句は、大嘘である。嘘と断じて差し障りがあるのなら、視野の狭さゆえの誤解だ。
確かに“日本のメジャー格闘技のビジネス面”は危機的状況にある。だがリング上で行なわれている試合は決してつまらなくなどないし、視野を世界に広げれば、UFCがアメリカはもちろんカナダ、イギリス、ドイツ、オーストラリア、さらにはUAE(アブダビ)など各地でビッグイベントを展開。競合が現れない一社寡占状態という問題はあるものの、ここ数年は“有史以来最大の世界的格闘技ブーム”といっていい。
さらに視野を広げることもできる。格闘技を大会や試合だけでなく“格闘エンターテインメント・カルチャー”として捉えてみるのだ。UFCファイターの相次ぐ映画出演。格闘マンガの系譜は途絶えることがなく、近年ではアマチュア修斗を舞台にした『オールラウンダー廻』(イブニング/講談社)が高い評価を得ている。テレビ番組の企画として行なわれるトーナメントの多くは『○-1グランプリ』だ。プロレスも含めた“闘い”がもたらす興奮とドラマ性は様々なジャンルに影響を与えてきたし、それは今も変わっていない。
“プロレスLOVE”を散りばめた“格闘文化の最新型”。
そして今、最も注目すべき“格闘文化の最新型”はアイドルの世界にいる。『ももいろクローバーZ』、通称“ももクロ”である。百田夏菜子、玉井詩織、佐々木彩夏、有安杏果、高城れにの5人組。昨年のメジャーデビュー以来、シングル曲すべてがオリコントップ10入りを果たし、ライブはのきなみ即日完売。アイドル戦国時代と呼ばれるシーンにあって、最もブレイクに近い存在と目されている。
もちろん、アイドルだから大前提は“かわいさ”である。優れた楽曲や、自由奔放なメンバーのキャラクターもインパクト絶大。だが同時に、ももクロは世にも稀なる戦闘集団とも言える存在なのである。
7月27日に発売された1stアルバム(発売日のデイリーチャートで2位を記録)のタイトルは『バトル アンド ロマンス(BAR)』。'90年代に天龍源一郎が率いたプロレス団体『レッスル・アンド・ロマンス(WAR)』へのオマージュだ。
他にも、ももクロはこれでもかとばかりプロレス・格闘技ネタを繰り出してくる。イベント名は『CHAMPION CARNIVAL』(全日本プロレスのシリーズ名)に『新秋ジャイアントシリーズ』(元ネタは“新春”ジャイアントシリーズ)。振り付けにバックキック(ソバット)や武藤敬司の“プロレスLOVE”ポーズが取り入れられ、アルバム発売記念フリーライブにおけるMCでは「ここが、この場所が、アイドル界のど真ん中だ!」と、長州力の名言まで引用してみせた。