野球善哉BACK NUMBER
ヤクルト浮沈の鍵を握る、
「田中世代」のエース候補。
~プロ4年目の増渕竜義~
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/02/17 10:30
この2年間、オーバースローとスリークォーターというふたつの投球フォームで試行錯誤している増渕竜義。故障もたびたびあって、なかなか一軍ローテーション定着にこぎつけないでいる
速球派の若手投手陣には無難にまとめる傾向が。
増渕のピッチングで気になるのは「かわそう」という姿勢だ。
大胆で迫力ある投球スタイルが彼の持ち味のはずだが「コントロールでうまくまとめようとする」(増渕)今のスタイルは、その本来の良さを消している。11日の紅白戦でも無難なピッチングに終始するその姿勢がやけに気になった。
ただ、そうした傾向は彼だけではない。
13日に先発し、3回6安打4失点と打ち込まれた3年目の由規は「四球を出さないことをテーマにして臨んだ」と前置きしながら「キャッチャーのミットに合わせるような腕の振りになっている。勢いが足りない。そこは見直していきたい」と、増渕と同じような悩みを吐露していた。
ヤクルトの投手陣、特にストレートが魅力の若手投手陣の間では、速球と制球力との間に挟まれるジレンマが、共通の問題になっているのかもしれない。
「今年は大胆さを1番のテーマにしていきたい」と増渕。
増渕もそのへんのことは自覚しており、今後は積極的に取り組んでいくと発言している。
「(紅白戦では)初の実戦と言うこともあり、いいところを見せようと思いすぎて、力んだりとか、そういう部分が出たのだと思います。プロに入って、これまではコントロールを気にしすぎて、腕が振れなくて駄目でした。今年は大胆さを1番のテーマにしていきたい。自分がプロに入れたのはストレートの球威だと思うので。大胆に投げることで、球のスピードも出てくるし、その中でフォームを安定させていきたいです」
今の野球界を引っ張っている若手と言えば、「田中世代」なのは間違いないだろう。
だからこそ、増渕には期待したい。
「田中世代」に属する活気ある投手がヤクルトから出てくれば、チーム全体においても良い起爆剤になるのではないか。そう思えてならない。