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ヤクルト浮沈の鍵を握る、
「田中世代」のエース候補。
~プロ4年目の増渕竜義~
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/02/17 10:30
この2年間、オーバースローとスリークォーターというふたつの投球フォームで試行錯誤している増渕竜義。故障もたびたびあって、なかなか一軍ローテーション定着にこぎつけないでいる
「田中世代」のドラ1入団投手はいまだ戦力にならず。
ドラフト1位で入団した選手たちもまだ満足できるような結果を残せていない。
2月11日の紅白戦では、4年目の高校ドラフト1位・増渕竜義と2年目のドラフト1位赤川克紀がそれぞれ先発。中継ぎで'07年大学・社会人ドラフト1位の加藤幹典、'06年・自由枠で入団の高市俊が登板した。実戦初日から彼らが登板したことは、首脳陣たちがいかに若手の彼らに期待しているかがうかがえる。
だが、結局全員が失点してしまった。それだけが大きな問題とは言わないが、投球内容も満足できるものでは無かったので、今後に不安を抱かせた。なかでも増渕は4回を投げて6安打3失点。若手世代の象徴「田中世代」でもある彼の伸び悩みは、ヤクルトの若手そのものの苦境を表しているように思える。
1年目152km→4年目140km。不調に喘ぐ増渕のストレート。
高田監督は「(増渕は)ブルペンではいい球を投げられるようになっている。だから、紅白戦1試合だけの結果ですぐに判断するということはない」と寛容な態度でコメントしていたが、試合後の当の本人はやりきれない表情をしていたので、自らの不振は自覚していたようだった。
「ブルペンで投げているフォームで投げられなかった。全然、力が出せなかった。キャンプに入って、以前のようなボールが戻ってきたと思っていましたけど、去年と同じです。自分の球が投げられていない」
増渕のストレートの威力は高校時代から評判だった。
甲子園出場はないものの、高校3年夏、埼玉県予選5回戦でノーヒットノーランを達成、準優勝に輝いている。'06年高校ドラフトで1位指名。豊作と言われた「田中世代」で無名校出身にもかかわらず、重複指名を受けたことは、増渕の評判がいかに高かったかを物語っている。
プロに入団してから1年目に開幕ローテを任され、MAX152kmまでその数字は伸びた。しかし、3戦目の中日戦で打ち込まれ、2軍に落ちると、それ以降は1軍に昇格しても、本来の力は発揮できなかった。今ではストレートで最速140kmに届くかどうかというくらいだから、彼がいかに苦しんでいるかがよく分かる。