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宇佐美がレアルから2得点も……。
~U-17日本代表と欧州の戦術格差~
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2009/08/13 11:30
R・マドリーの選手から激しいタックルを受ける宇佐美貴史。今秋のU-17W杯までに、更なる成長はあるか。
8月8日から、スペインのビジャレアルで国際ユース大会が開催され、日本からはU-17日本代表とガンバ大阪が出場している。15歳から18歳の選手に出場資格があり、世界の強豪クラブが参加することで知られるこの大会は、今年で10回目を迎えた。
過去にはメッシ(バルセロナ)、ピケ(バルセロナ)、セスク(アーセナル)を擁したバルセロナや、ジュゼッペ・ロッシ(ビジャレアル)がいたマンチェスター・ユナイテッド、大会MVPを獲得したエベル・バネガ(バレンシア)が率いたボカ・ジュニオルスといったクラブが出場してきた。また、指導者の道を志した元有名選手が監督となってチームを率いて来ることも多く、今年は元オランダ代表フランク・デ・ブールがアヤックスの監督としてやって来ている。
今回の出場チームは、A組にビジャレアル、リバプール、アヤックス、ガンバ大阪、B組にレアル・マドリー、ACミラン、セルティック、U-17日本代表と欧州の強豪クラブの中に日本チームが2チーム入ることとなった。
欧州強豪の洗礼を受けたU-17日本代表。
とりわけ日本では、10、11月とナイジェリアで行われるU-17ワールドカップに出場するU-17日本代表に注目が集まっているそうだ。ガンバ大阪でトップチームデビューを果たした宇佐美貴史を中心に有能な選手が多く揃うと言われるこの世代はプラチナ世代と呼ばれているという。U-17ワールドカップのグループリーグでブラジル、メキシコ、スイスと同組になった日本にとって、このビジャレアル国際ユース大会は絶好の強化の場となりそうだ。
8日、日本はACミランと初戦を戦った。試合序盤こそ、ショートパスとドリブルを織り交ぜた攻撃で敵を揺さぶった日本だが、ACミランが守備を固めると効果的な攻撃を仕掛けられなくなってしまった。4-5-1を敷いた日本のワントップを徹底的にマークして高い位置に起点を作らせず、両SHに縦への突破を許さないミラン守備網。それを崩そうと仕掛ける日本の攻撃は、縦に急ぎすぎる傾向が強く、それは自らのバランスを崩しプレーの精度を落とす結果を招いた。結局、試合終了まで攻撃のリズムを変えることができなかった日本は、後半立ち上がりにコーナーキックから許した1点を返すことができず、0対1で敗戦した。
翌9日、日本はレアル・マドリーと対戦した。試合序盤から積極的に攻め上がるレアルにチャンスを作られるものの、逆に攻撃参加したレアルSBの後方に生まれたスペースを利用して日本は反撃。前半13分にFW杉本が空中戦で競り勝ったボールを拾ったMF宇佐美が敵ペナルティエリア手前で倒されてFKを獲得すると、宇佐美自ら直接FKを決めて先制に成功した。チャンスを作りながらも日本に先制を許したレアルは焦りから攻撃が単調になっていく。そこを日本は逃さず、後半2分に左サイドでボールを奪うと、FW杉本、左SH高木と素早いパス交換でサイドを突破。そして高木からの折り返しを右SH堀米がMF宇佐美につなぎ、宇佐美がこの日2点目となるゴールをレアルゴールに突き刺した。
レアル相手に2点を先制した日本代表だったが……。
後半立ち上がりに点差を2点と拡げた日本はその後も素早いパス回しからチャンスを作り出した。しかし、幾度かの好機を逸すると、試合の流れが変化した。まずは後半17分に与えたペナルティエリア手前からのFKを直接決められると、その3分後には右サイドを突破されて放たれたクロスを押し込まれ、瞬く間に同点に追いつかれてしまった。残り約10分間(大会規定で前後半30分ハーフ)で必死に巻き返しを図った日本だが、ゴールを生むことはできず。大会初勝利を逃すこととなった。