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女子W杯グループ1位突破の鍵は、
安藤、永里、大野の“トライアングル”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2011/07/01 10:30
過去最高のFIFAランク4位でW杯に臨んだ、なでしこジャパン。まずはグループリーグ突破に向け、初戦で貴重な勝ち点3を獲得した
北京五輪ベスト4という看板をひっさげて、日本がドイツに乗り込んだ。
女子W杯を戦うためだ。
かつては小野伸二が活躍し、現在はチョン・テセが所属、さらにセレッソ大阪の乾貴士の移籍も噂されるボーフム。そんな日本とゆかりの深い地で、日本女子代表はニュージーランドと対戦した。
格下とされる相手に、前半6分の永里優季のゴールで先制するも、その6分後にあっさりと同点ゴールを許してしまう。だが、後半23分の宮間あやのFKで勝ち越し、2対1で大事な初戦を手にすることが出来た。
宮間は、相手GKにボールが見えないようにするため、阪口夢穂と永里に壁に入るように指示を送り、あえてゆっくりと助走をとることで相手GKに先に動かせて、その逆をついた。これだけの状況を瞬時に整えた宮間のFKに、まず驚かされた。
だが、それ以上に興味深かったのは、先制点のシーンだった。
先制点のきっかけは安藤梢の「戦って、勝つ」スライディングだった。
はじまりは、安藤梢のスライディングだった。
先制点が生まれるおよそ1分前、日本は自陣で一度は相手にボールを奪われる。2010年から女子ブンデスリーガのデュイスブルクでプレーする安藤は、すぐさま強烈なスライディングをして、相手の足元に入りかけたボールを味方につないだ。
「ドイツでやっているというのもあると思うんですけど、ああいう球際の戦いで負けたくないというのがある。自然と体が動いたのかもしれないですね」
試合後、安藤はそのシーンをこんな風に振り返っていた。ドルトムントやシャルケとも近いルール地方のクラブに所属する彼女は、「戦って、勝つ」という闘争精神が自然と身についているのかもしれない。
要求通りの大野のパスを、左足ボレーで蹴り込んだ永里。
安藤のスライディングでこぼれたボールは、しばらく両チームの間を行き来した。そして、再びニュージーランド選手の元へ。
しかし、そこからのパスを、本来のFWではなく右MFに入った大野忍がカットする。大野は少しだけ前に運ぶと、右足で浮き球のパスを右斜め前方、相手のDFラインの裏へ送った。
「(ボールを奪った直後は)自分で仕掛けようと思っていました。でも、永里が良い動きをしたのが見えたので、相手の背後に出した。あとはもう、相手にひっかかるかひっかからないかだけの問題だったんですけど、うまい具合に越えてくれたんです」
大野がボールを奪った瞬間に前に走り出した永里は、その直後に右手をあげている。右斜め前に送って欲しいという合図だ。実際にそこにパスが来ると、ダイレクトで左足でボールを浮かせた。
「あそこ(のスペース)だと思ったので。イメージ通り? はい、完全に」
ゴールを決めると宣言し、自らにプレッシャーをかけてきた永里がしっかりと結果を残した。