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女子W杯グループ1位突破の鍵は、
安藤、永里、大野の“トライアングル”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2011/07/01 10:30
過去最高のFIFAランク4位でW杯に臨んだ、なでしこジャパン。まずはグループリーグ突破に向け、初戦で貴重な勝ち点3を獲得した
安藤と永里の2トップのスムースな連係は円熟の域に。
この先制点に至る流れの中で目立った3人の関係性が、興味深いのだ。
実は、これまでは大野がFWで、安藤が右MFでプレーすることが多かった。しかし、6月18日に行なわれた親善試合の韓国戦あたりから2人のポジションは逆になることが多くなった。この試合の2日前の練習でも、安藤がFWでプレーして大野が右MFでプレーする時間帯もあれば、その逆もあった。
安藤と永里が2トップを組んだとき、相性の良さがうかがえるのはクロスへの飛び込みである。片方がニアサイドに入れば、もう一方がファーサイドへ。あるいは片方がファーサイドからニアサイドに流れれば、もう一方がニアサイドからファーサイドへと逃げていく。
前半18分、永里がファーサイドからニアサイドへ進み、空いたファーサイドに安藤が。安藤のボレーシュートは左ポストを叩いてしまったのだが、もう何年もの間コンビを組んでいるかのようなオートマチズムがあった。
ポジショニングの議論を深めることで阿吽の呼吸がうまれた。
永里は今季の女子ブンデスリーガのチャンピオンであり、女子チャンピオンズリーグでも準優勝を果たしたポツダムでプレーしている。
永里と安藤――2人は、2010年初頭にときを同じくして女子ブンデスリーガにやってきたのだ。
試合の2日前のこと。練習の合間に選手たちが給水する場面があった。永里は水を飲むと、他の選手よりも一足先にピッチに戻って、何やら考えていた。
「(周囲との連携では)言葉で要求するより、プレーで示し続けたい」と語る永里は、あまり多くを語りたがらない。
ところが、この練習が終わったあと、他の選手がロッカーへ引き上げる中で、安藤と2人でピッチに残り数分にわたり話をしていた。2トップを組む2人は、どちらが中盤に下がり、どちらが高い位置をとるのかについて議論をかわしていたのだという。
「アンチ(安藤)とは感じている部分が似ている」と永里が言えば、「永ちゃんとの距離感はやりやすいものがあります」と安藤は語る。2人の間には、阿吽の呼吸がある。