スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
チーム青森の敗退から見えた、
マネジメントの“超”複雑要素。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2010/02/24 18:45
あれ、元気がないな。
それがオリンピック・コロシアムで見たカーリング日本代表の姿だった。
私が見たのは準決勝進出をかけて、重要となったスイス戦とスウェーデン戦。
日本チームはハウスと呼ばれる円の手前にガードを置き、攻めには行っているのだが、なかなか得点パターンが見えてこない。両試合ともに主導権を握れないまま「コンシード」――相手の勝利を認めて握手すること――という結果に終わってしまった(ゴルフのマッチプレーではおなじみの言葉だ)。
最終成績は3勝6敗。前回、トリノ・オリンピックの4勝から比べると、一歩後退というところだろうか。
ただ、前回は「いい試合を見た」という感触が残ったのだが、今回は「もっと出来たかもしれない」という気がする。
チーム青森はもっともっと、実力のあるチームだ。
カーリングは体力、精神力、知力のすべてを試される競技。
実のところ、私は経験4年の素人カーラーだ。トリノ・オリンピックを見て始めたミーハーである。
一般カーラー向けの大会に出てさえ感じるのは、1日に6エンド、3試合を戦うと、肉体的、精神的にクタクタになるということだ。コンディションをベストに保つことは本当にむずかしい。
しかも10エンド制の場合だと、2時間40分程度の試合を戦わなければならない。当然のことながら冷気が体を包み続けることになるので、体調の管理もポイントになってくる。
しかもオリンピックでは、一週間で9試合もある。
カーリングは体力、精神力、そして知力を試されるタフな競技なのだ。しかも時として「運」まで試されるから、たまったものではない。
必ずくる“スランプ”。脱出のためのノウハウとは?
今回のバンクーバー・オリンピックで準決勝に進出した4チーム、カナダ、スウェーデン、中国、スイスにしてもスランプの時期があった。しかし、どん底から脱出する術を知っている。
なんとか苦しい試合をモノにして、ストーンを投げる感覚が戻ってくるのを待つのである。
スイスなどは初戦から3連敗。そこから6連勝してくるあたり、長丁場を乗り切るノウハウを持っている印象を受けた。
日本にだって経験値がある。前回トリノ大会では、日本は前半戦で勝てる試合で星を落として苦しい展開になったが、そこからスキップ小野寺歩がアグレッシブな作戦に方針を転換、強豪カナダに勝ったことで日本のカーリング熱に火がついた。
対して今回のマネジメントはどうだったか?
日本時間の2月20日(土)、首都圏では視聴率16%以上を記録した日本vs.イギリス戦で、日本は劇的勝利をあげ2勝2敗の五分に成績を戻した。
その翌日から日本チームは「人事異動」という札を切った。選手の入れ替え、セカンドとサードのポジション変更。スウェーデン戦ではバイススキップ(スキップが投じる時に代わって指示を出す)を交代させるなど、積極的に「人事札」を切っていった。
結果的にロシア戦では大逆転勝利をたぐりよせたが、それから4連敗となってしまい、準決勝進出はならなかった。