Jリーグ観察記BACK NUMBER
Jリーグに一流外国人が来ない理由。
獲得に残された2つのルートとは?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMasahiro Ura
posted2009/11/24 10:30
リーグ戦で9得点、ACLで5得点をあげるなど、川崎Fの重要な得点源となっているFWレナチーニョ(11月20日現在)
代理人との交渉を日本サッカー協会がもっとサポートすべき。
このルートで問題なのは、一筋縄ではいかないブラジル人代理人と対峙しなければいけないということだ。彼らの言いなりになってしまうと、本当は手にできたはずの移籍金が大きく減ってしまう。これからのJリーグのGMや監督には、国際移籍ルールを学び、知識武装することが求められる。
そこで提案したいのは、日本サッカー協会によるFIFAの国際移籍ルールの完訳だ。
FIFAの規約は、英語、スペイン語、ドイツ語などで書かれ、日本語に訳されたものは公開されていない。FIFA公認の代理人を目指す人間は、外国語で書かれた資料を勉強しなければいけないのが現状だ。
もしかしたら日本サッカー協会の内部にはすでにあるのかもしれないが、協会主導で規約を翻訳したものをホームページで無料公開すれば、Jリーグ関係者の国際ルールに関する知識水準は一気に上がるだろう。
ヨーロッパの多くのサッカー関係者は、毎年のように変更される国際ルールを知るために、母国語で資料にあたることができる。協会が常に新しい情報を日本語に訳して公開すれば、代理人に手玉に取られるGMを減らせるはずだ。
まだ可能性が残されるアフリカ・ルートを積極的に開拓する。
また、アフリカ・ルートを開拓するという手もある。
コートジボワール出身のドゥンビアは2006年に柏レイソルに入団し、2008年の1月から6月までJ2の徳島ヴォルティスでプレーしていた。しかし、2008年6月にスイス1部のヤングボーイズに移籍すると一気にブレイク。昨季、スイスリーグの得点王に輝き、今やスイスリーグで一、二を争う人気選手だ。
浦和レッズのフィンケ監督は、今年8月、ガーナ出身のファイサル・モハメド(18歳)を獲得した。もし2、3年後にファイサルがJリーグの得点王争いで上位に入るようなら、アフリカ大陸から才能あるタレントを発掘して育てる、という手法が日本にも定着するかもしれない。
今季、Jリーグの得点ランキングの上位に日本人選手が多数入っているのは、日本人ストライカーの成長の一方で、中東のクラブによって優れたブラジル人ストライカーを引き抜かれたという側面もある。将来Jリーグをもっと刺激的なリーグにするためにも、短期的補強を行うのと同時に、長期的視野に立った外国人獲得の準備を進めることを期待したい。