Jリーグ観察記BACK NUMBER
Jリーグに一流外国人が来ない理由。
獲得に残された2つのルートとは?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMasahiro Ura
posted2009/11/24 10:30
リーグ戦で9得点、ACLで5得点をあげるなど、川崎Fの重要な得点源となっているFWレナチーニョ(11月20日現在)
アジアチャンピオンズリーグ決勝のタイミングで、欧州のTV放映権会社で働く方と会う機会があった。そのとき、以前から疑問に思っていたことをぶつけてみた。「なぜJリーグに知名度の高い外国人選手が来なくなったのか」と。
彼は実に明快な答えを持っていた。
「Jリーグがスタートしたとき、まだヨーロッパの主要リーグとJリーグのTV放映権の額に大きな差はありませんでした。それが現在は、Jリーグが年間約50億円なのに対して、プレミアリーグは年間約2000億円になっている。40倍もの差がついてしまった。かつてのように名の知れた外国人選手を取れなくなったのは、仕方ない面があるでしょう」
J発足時にはレオナルド、ドゥンガ、ストイコビッチらが……。
'93年にJリーグが発足した当初は、ブラジル代表のレオナルド、ドゥンガ、サンパイオ、旧ユーゴスラビア代表のストイコビッチといった世界的にも知られたスター選手が、日本のスタジアムで躍動していた。それから時が流れ、ヨーロッパでペイTVが急速な勢いで普及し、優良コンテンツとしてサッカーの放映権が値上がりすると、もはやJリーグのクラブが提示できる給料は特別なものでなくなってしまった。
プレミアリーグは国外からの放映権収入が多いイメージがあるが、それは全放映権収入の4分の1にすぎない。約4分の3は、人口6200万人のイギリス国内で稼ぎ出している。ならば2倍の人口を誇る日本も同規模のビジネスを展開できるのでは……と思いたいところだが、「ペイTVの国民への浸透度を考えると、現在の額より上げるのは難しい」というのが専門家の意見だ。
もちろん過去に名古屋に来たリネカーの例のように、大金を投じたからといって必ず結果が出るわけではない。しかし、ドゥンガのような“本物”を連れてくることができれば、リーグの魅力が増すだけでなく、まわりの選手の成長を促す効果もあるはずだ。
これからJリーグのクラブは、限られた資金の中で、どうやってチームにプラスになる外国人選手を獲得していけばいいだろう?
まずは既存のブラジル・ルートのノウハウを有効に使う。
言うまでもなく、これまでに培ったブラジル・ルートを生かすことは、そのひとつだろう。川崎、札幌、東京ヴェルディに在籍したフッキは、現在FCポルトのエースとしてチャンピオンズリーグの舞台で活躍している。これほどの選手を連れてくるパイプが、日本にもあるということだ。
昨年8月に川崎に加入したレナチーニョは、関塚隆監督の厳しい指導によって守備の意識が高まり、より完成度の高いFWに成長しつつある。すでに欧州のクラブが目をつけ、来年1月に移籍することが有力視されている。もし実現したとしても残念ながらレンタル契約のため、川崎には移籍金が入らないが、もし今季川崎がJリーグを制することができれば、十分元を取ったと言えるだろう。