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美しくも脆いパスサッカー。
~サンフレッチェ広島と岡田ジャパン~ 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byToshiya Kondo

posted2009/05/26 06:01

美しくも脆いパスサッカー。~サンフレッチェ広島と岡田ジャパン~<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

 『支配率』とか『シュート数』が、役に立たないことは重々承知しているのだが、これだけ際立った傾向があると、さすがに注目せざるをえない。

 今季のサンフレッチェ広島、支配率とシュート数がずば抜けているのだ。

 これまでの13試合で、広島が支配率で負けたのは、3節の鹿島戦と8節の名古屋戦だけ。シュート数で負けたのは、4節のガンバ大阪戦だけだ。細かい“算数”をして恐縮だが、支配率なら11勝2敗、シュート数なら9勝3分1敗となる。ほとんどの試合において、ホームだろうがアウェーだろうが、支配率で上回り、より多くのシュートを打っているのだ。

 だが、その全てが結果に結びついているわけではない。

 現在の成績は、5勝5分3敗の6位。昇格組にしたら十分に健闘しているのだが、これだけの試合内容があれば、さらに上を目指せるはずだ。「パスをつなぐ攻撃サッカー」という心地よい賛辞に満足していたら、2部の悪魔がまた忍び寄ってくるだろう。

 なぜ、広島はいいサッカーをするのに、生かし切れないのだろうか?

広島の「スペースを作って、使う」スタイルの長所と短所。

 広島の攻撃のコツは、誰かが走って作ったスペースを、他の選手が使うことにある。たとえば1トップの佐藤寿人がサイドに流れ、中央に空いたスペースに2列目の高萩洋次郎や柏木陽介が走りこんでシュート――というように。最終ラインからDFの槙野智章が駆け上がってくることもある。

「Jリーグのチームは、ほとんど同じシステムでプレーしている。こういう、後ろから走り込むサッカーをすれば、うちにもチャンスがあると思った」

 かつてオシムの右腕を務めたペトロビッチ監督は、自らの戦術をこう説明する。Jリーグを徹底的に研究し、手持ちの駒を見渡した結果、このスタイルに着地した。

 しかし、「スペースを作って、使う」ことが前提になっているだけに、人数をかけられてスペースを消されると、途端に攻撃の切れ味が悪くなってしまう。

 11節の千葉戦が、それを象徴していた。千葉がDFラインを高くして中盤のプレッシャーを激しくすると、広島は危険なエリアでボールを持つことができない。支配率65%対35%、シュート数22対8と内容では優ったが、試合に勝ったのは千葉だった。

 では、広島はどうすればよかったのか?

【次ページ】 日本サッカーは、ロングボールへの嫌悪感を無くすべき。

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