Jリーグ観察記BACK NUMBER
美しくも脆いパスサッカー。
~サンフレッチェ広島と岡田ジャパン~
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byToshiya Kondo
posted2009/05/26 06:01
日本サッカーは、ロングボールへの嫌悪感を無くすべき。
アメフトをやれば良かった、と筆者は言いたい。
広島の選手たちはパスをつなぐ意識が強すぎ、ロングボールの効果を忘れてしまっているように見えた。アメリカン・フットボールでクォーターバックが一発のロングパスを狙うように、もっとDFラインの裏を狙うべきだ。佐藤寿人という最高のレシーバーがいるのだから、なおさらである。うまくいけば相手のDFラインが下がり、守備が間延びし、本来のパスサッカーを展開しやすくなるはずだ。
ただ、この“ロングボールへの嫌悪感”は、広島だけの問題ではないかもしれない。現在の日本代表も、ロングボールを「下手な選手のやること」、「格好悪い」と思ってはいないだろうか。
2月のW杯最終予選のオーストラリア戦、相手のラインディフェンスの裏には広大なスペースがあったのに、ロングパスで一発を狙おうとする意識が少ないように見えた。もちろん2列目からの飛び出しにスルーパスを合わせる“お家芸”は何度もトライされたが、こういう大技はそうカンタンに決まるものではない。
柔道で『投げ技』(たとえば内股)の切れ味をより増すために、『足技』(たとえば大内刈り)を徹底して習得するように、日本のサッカーにはもっと縦の揺さぶりが必要なのではないか。
ロングボールを使えるようになれば、日本のパスサッカーはもっと怖くなるはずである。