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日本人トップタイの得点力。
佐藤寿人の新しい武器とは? 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byToshiya Kondo

posted2009/05/15 06:01

日本人トップタイの得点力。佐藤寿人の新しい武器とは?<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

 ディフェンダーからしてみれば、実に厄介なストライカーになった。

 サンフレッチェ広島を牽引する佐藤寿人のことだ。オーストリア人監督、ペトロヴィッチのもとで、1トップを務めてからというもの、ポストワークという新たな武器を手に入れたことでプレーの幅が広がっている。

 佐藤の特徴はなんといっても一瞬のスピードで裏のスペースに飛び出すこと。ディフェンダーとしては、ぴったりと体を寄せてしまえば、裏に抜け出されてしまう危険性があるため、やや引いて守っていることが多いようだ。佐藤はこうした敵ディフェンダーの守備を逆手に取って、ボールを受けやすい状況をつくってクサビに入っては、決定的な場面を生み出しているのだ。

一瞬の飛び出しとポストプレー。ふたつの武器で得点を量産。

 5月9日、ジェフ千葉戦での先制点も、佐藤のポストプレーによって導かれたものだ。パッと手を広げてボールを呼び込み、すぐさまシャドーストライカーの柏木陽介にパスを送る。柏木からペナルティーエリアに侵入した高萩洋次郎に浮き球のパスが出され、ゴールが生まれるのである。

 柏木、高萩との連係を重視したポストプレーを相手ディフェンダーが嫌がるように体を寄せてくるようになれば、それこそ佐藤の思うツボなのだ。「待ってました」とばかりに裏のスペースを突くようになる。この佐藤の駆け引きの妙もあって、5月10日現在、チームはリーグ2位の20得点を挙げ、佐藤自身も日本人トップタイの5得点をマークしている(5月15日現在)。

 170cm、68kg。

 1トップはつぶれ役にもなることを考えれば、小柄な体にかかる負担は少なくないだろう。だが、佐藤は重心をぐっと低くして、太くなった上腕を張るなど工夫を凝らして相手ディフェンダーを背負っている。

 小兵の名ストライカーと言えば、90年のイタリアW杯で得点王に輝き、ジュビロ磐田でもプレーしたイタリア代表のサルバトーレ・スキラッチを思い出す。171cmの小兵ながら、当たり負けしない体の強さがあった。巧みな駆け引きと一瞬のスピードという点でも、今の佐藤と共通する部分は少なくない。

 佐藤のプレーの特徴としてもうひとつ挙げるなら、ボールを受け取ってからの、次のプレーを選択するスピードが速い。相手を背負うのはほんの数秒。コンタクトプレーをむやみに長引かせることなく、スピーディーな攻撃を演出しているのである。

1トップの本職を岡田ジャパンが欲するならば……。

 ジェフ戦の後、「体、ゴツくなってませんか?」と水を向けると、佐藤は「そんなことはないですよ」と笑って否定した後で自身の役割について、こう語った。

「やはり、重心を低くしないと倒されてしまうというのはある。背負うことを考えれば、体を強くしていかないといけない。ただ、僕は例えばイブラヒモビッチみたいに、長く前線でボールをキープしなければならない、という役割ではないんです。僕が求められているのは2シャドー(柏木、高萩)と絡んで、ボールを動かしていくという役割。ゴールに向かうという部分で、もっと周囲とタイミングを合わせていきたいと思っています」

 日本代表はキリンカップを経て、6月にW杯出場を懸けてアジア最終予選3連戦を迎える。「4-2-3-1」を採用する岡田ジャパンには1トップを“本職”とするプレーヤーが、実はいない。ケガ明けのエース、玉田圭司の状態も気になるところだ。これまで岡田武史監督は、佐藤を主にシャドーストライカー、あるいはサイドアタッカーとして起用してきた。今の佐藤を1トップに置いてみたら――。好調の佐藤寿人を見ていると、そんな想像も湧いてくる。

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