チームジャパン提唱者が語るBACK NUMBER
為末大 「メッセージを発しながら
僕が感じたこと、考えたこと」
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/06/22 06:00
4大会連続となるロンドン五輪出場を目指してトレーニングを続ける傍ら、アスリートの枠組みを超えた活動にも積極的に取り組む為末大。社会貢献活動を目的にアスリートが競技種目の枠を超えて集う日本アスリート会議にも、アスリート代表として名を連ねた
「スポーツだけに限らない支援を継続させていく必要も」
「とりあえず、支援に協力したいというアスリートたちが、有名選手から学生まで誰でも登録できる場所をつくろうと思います。今回『チームジャパン』には、ドクターやトレーナーの方たちも沢山集まってきてくれているので、そういう人たちの持ち味を活かした活動も可能です。さらにたとえば教員の方を募って、小さな学校みたいな形をとるなど、色々な特殊技能を持っている人も巻き込むことで、スポーツだけに限らない支援を継続させていく必要もあります。それはおそらく、1年、2年という単位でやらなければいけません」
今回為末は、メッセージを発したことで改めてスポーツが持つ底力を実感できたという。有名選手が一気に動いてくれたことも重要だったが、かつてスポーツをやっていた人たちからの「自分の経験を生かして何かできないか」という相談も多かった。
プレーすることをためらう気持ちを払拭するためには……。
だが、この震災が日本のスポーツ界に問題を突きつけたのも事実だろう。
「外国では災害などに襲われたとき、人々が早い段階からスポーツで感動するのを求めることが多いけど、日本ではまだそういう意識は薄いから、選手にもプレーをすることをためらう気持ちが出てしまうのだと思います。それを払拭するためにも、アスリートは自分は何のためにやっているかというメッセージを持たなければいけないんでしょうね。そのいい例が選抜高校野球ですが、トップ選手も同じように、本気でそれぞれのメッセージを出し続けていかなければいけない。その点でも今回の『チームジャパン』へのアスリートたちの積極的な参加は、自分たちの意識を変革させるキッカケにもなると思います」
この大震災で為末は、自分が日本人であることを痛感し、アスリートとしても「日本代表」であるという感覚が以前よりもずっと強くなったという。そして今後は日本代表として走ることで、〈日本は大災害から復活を果たし、再び世界に貢献できるようになる〉というメッセージを多くの人に伝えたいと考えている。