チームジャパン提唱者が語るBACK NUMBER
為末大 「メッセージを発しながら
僕が感じたこと、考えたこと」
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/06/22 06:00
4大会連続となるロンドン五輪出場を目指してトレーニングを続ける傍ら、アスリートの枠組みを超えた活動にも積極的に取り組む為末大。社会貢献活動を目的にアスリートが競技種目の枠を超えて集う日本アスリート会議にも、アスリート代表として名を連ねた
高まっていた社会貢献への意識が震災によって表面化。
「チームジャパン」には、バスケットボールの大神雄子や竹内公輔、志村雄彦の他、フィギュアスケート、セパタクロー、ハンドボール、K-1など様々な競技の選手や、一般のスポーツ愛好家まで、3月30日現在で136名が名前を連ねる。この間に集まった義援金は2700万円を超え、メッセージを寄せたアスリートは100名以上に及んでいる(※6月21日現在、139人が名前を連ね、義援金は3190万円を数えている)。
「無我夢中でやってきたけど、ここまでのことができた要因は、選手たちが以前から『社会に対して何かできないか』と考えていたことだろうと思います。それが震災によって表面化した。それにツイッターなどのソーシャルネットワークのおかげで、皆が同調性を持てたことが大きいですね」
選手の意識が徐々に変化していたことを、為末は感じていた。近年スポーツへの支援が厳しい状況になっており、アスリート同士で様々な話し合いの場を持っていた。当初は「スポーツ界への支援をどう引っ張り出すのか」が論点になっていたが、ここ1年くらいは「自分たちが社会をどう支援すべきか」という意識に変わってきていたという。
為末らが積極的に気持ちを外へ向かって発信したことで、他のアスリートたちもスポーツの役割を考えるための後押しをされ、「自分たちに何ができるか?」という意識を持つようになっていたのだろう。小さな波がうねりを起こし、復興のために貢献しよう、立ち上がろうという大きな流れになったのだ。
「人的支援」が必要になってくる中で、アスリートにできること。
だが「義援金を集める」という一過性の活動に終わらせてはいけないと、為末は当初から意識していた。復興への戦いはこれからが大変なのだと。
為末は3月下旬に一時帰国し、多くのアスリートと話す機会を設けた。自分たちがそれぞれの持ち場で最大限の能力を発揮しながらも、支援を継続することを確認しあった。
「時期によって効果的な支援方法も変わってきます。これからは人的支援が必要になってくる。その中で我々アスリートができることはないか、話しあったんです」
今後は衣食住など最低限必要な部分だけではなく、人間らしく生活するための支援や、精神面でのサポートも重要度を増してくる。たとえば、もし被災地からの要望があったり、必要とされれば、選手たちが出かけて行って子供たちと一緒にスポーツもできる。未来を担う子供たちの顔に笑みを取り戻すための力にもなれるはずだ。