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検証! ACLで日本勢敗退の理由。
拮抗するアジア強豪チームとの実力。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKenzaburo Matsuoka/AFLO
posted2009/11/10 10:30
アジアを楽勝で勝ち抜くほど、Jのクラブに実力は無い。
もちろん、組み合わせや運だけで片づけられないところはある。
そもそも'07年に浦和が初優勝を成し遂げるまで、Jリーグ勢の成績は惨憺たるものだったのだ。
グループステージ敗退はなかば当然で、それに対する批判も非難もあがらなかった。ACL敗退で監督の立場は危うくなるようなことは、ただの一度もなかった。敗退の決まったチームの選手から、「来年こそは」という発言を聞くこともできなかった。
それが、'07年からはいきなりの連覇である。
Jリーグのレベルが飛躍的に向上した結果……とは考えにくい。むしろ変わったのは、出場クラブを取り巻く周囲の熱だった。
クラブW杯の開催地がUAEに変更され大会への興味が半減?
'07年から開催国枠が設けられたことで、Jリーグの優勝チームは自動的にクラブW杯へ出場できることになった。しかし、「開催国枠ではなく、アジアを制覇したうえで出場しようじゃないか」という機運が高まり、『ACLサポートプロジェクト」』のような後方支援がスタートした。選手たちは「クラブW杯」への思いを熱く語るようになり、「アジアの代表として世界の舞台で戦う」ことを望むようになった。メディアやサポーターも、Jリーグ勢にACL優勝を求めるようになった。
今シーズンは、空気が変わっていたのではないだろうか。開催国がUAEになったことで、クラブW杯への関心が薄れた気がするのだ。
実力拮抗のアジアで勝ち抜くためには“精神的餓え”が必要。
バルサやマンUのようなビッグクラブと呼ばれるような存在が、ACLには見当たらない。欧州CLなどに比べると、大会のレベルはかなり拮抗している。グループステージはともかく、ラウンドオブ16以降は互角の攻防が続く。どちらが勝ってもおかしくない試合の連続だ。
実力に開きがなれば、二次的な要素が勝敗に関わってくる。チームのモチベーションを高める周囲の熱や関心度が、重要度を増していく。要求されることで選手は力を振り絞り、勝利の可能性が拡がっていく。
'07年から連覇を達成していたとはいえ、Jリーグがアジアで抜きん出た力を持っているわけではない。過密日程、気候の違い、時差といったものが絡むACLでは、Jリーグが持つ実力的なアドバンテージは小さなものでしかないのだ。
そうしたなかで勝利をつかむには、〈精神的な飢え〉が重要になると僕は思う。出場チームの監督や選手ではなく、彼らを見つめるサポーターやメディアの「飢え」が。
Jリーグ勢の敗退を批判する声は、最後まで聞こえてこなかった。今シーズンに限っていえば、我々にとってのACLはその程度のものだったのだろう。勝てるはずがなかった。