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FC東京・平山相太は
190cmのファンタジスタか?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMasahiro Ura
posted2009/11/10 10:29
高校選手権以来、国立には何かと縁のあるFC東京の平山相太。ナビスコ杯決勝でも貴重な追加点をヘッドで決めた
FC東京の城福浩監督の言葉に、一瞬耳を疑った。
「平山はファンタジスタの素質を持っているんですよ」
一般的にファンタジスタといったら、元フランス代表のジダンや元イタリア代表のトッティといった、特別なパスのアイデアを持つ選手を指すだろう。先入観を持ったらいけないのかもしれないが、平山相太のように背が高く、ポストプレーが売りと言われているFWが、ファンタジスタと呼ばれたのは聞いたことがない。
異質なパス感覚がファンタジスタたるゆえん?
だが、城福監督によると、平山のバイタルエリアでボールを受ける感覚と、前を向いてどこにパスを出すかの感覚は、異質だというのだ。
これまでの思い込みを捨て、新たな視点で11月3日のナビスコ杯決勝、FC東京対川崎フロンターレを観てみた。すると、確かに平山からファンタジスタのニオイを感じるではないか。ボールを受けるとくるりと反転し、実にDFが嫌がるスペースにパスを出していた。
たとえば、前半38分、右サイドで赤嶺真吾からのパスを受けた平山が、ワンタッチでDFラインの裏のスペースにスルーパス。走りこんだ赤嶺のシュートは枠を外れたが、決定的なシーンを作り出した。
「ファンタジスタ? 聞いたことありませんよ(笑)」
はたして平山本人は、自分の「パスを受けて出す」センスをどう見ているのだろう? FC東京がナビスコ杯を制した3日後、東京・小平の練習場で平山に声をかけた。
「え、マジっすか?」
ファンタジスタという言葉の響きに、最初、平山は驚きを隠さなかった。
「そんな話、(監督から)聞いたことありませんよ(笑)」
城福監督の方針として、各自の長所をわざわざ呼び出して伝えることはしていない。いくら特別な才能があったとしても、レギュラーを保証できるわけではないからだ。それぞれの個性が伸びて欲しいという思いを、言葉で伝えるのではなく、練習の中のプレーで伝えるのが城福流だ。