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独断と偏見で選ぶ、
プレミア'08-'09のベスト&ワースト。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byAction Images/AFLO

posted2009/07/01 06:01

独断と偏見で選ぶ、プレミア'08-'09のベスト&ワースト。<Number Web> photograph by Action Images/AFLO

14歳のユース時代からマンチェスターUでプレーし続けるギグス。ベッカム、ネヴィル兄弟、スコールズらと黄金期を築いた後も、C・ロナウドらと共に活躍し続けてきた

「この10年間、1度も欠かさず試合に足を運んだし、そのために10万ポンド(約1600万円)以上もつぎ込んだ。試合に金を使っていなけりゃ、家が買えたのに……」

 プレミアシップが幕を閉じた5月24日、降格が決まったミドルズブラのサポーターはラジオの番組でこう述べて同情を誘った。彼らは自分の生活を犠牲にしても、愛するクラブに尽くしてしまう。今回は、この種の健気な「信者」たちの満足度という視点から、'08-'09シーズンのベスト&ワーストを選んでみたいと思う。

ベスト&ワーストチーム──マンUも酷かったが。

 まず『ベストチーム』としてはエバートンを推したい。ビッグスターともビッグマネーとも無縁の「庶民派(The People's Club)」で、デイビッド・モイーズ監督自ら「選手層が薄すぎる」と認めるほどの陣容ながら、2年連続のプレミア5位と14年ぶりのFAカップ決勝進出を実現した。

 タイトルにこそ手が届かなかったものの、シーズンの締めくくり方も上出来だった。5月30日に行われた上記のFAカップ決勝では、試合開始わずか25秒(大会史上最短)でルイ・サハが先制ゴールを奪取。最終的にはチェルシーに1-2で力負けしたが、ウェンブリーに集結した4万人超のエバートン信者からは、試合後も惜しみのない拍手が贈られている。

 マンチェスター・ユナイテッド(以下マンU)などは、リーグカップ制覇とプレミア3連覇を達成したが、エバートンと違って締めくくりが悪すぎた。バルサとのCL決勝は、本来の戦い方を“させてもらえなかった”のではなく、本来の戦い方を“しなかった”ために完敗しているからである。最後の最後でシーズン最大の失態を演じた罪は重い。

 とはいえ、このマンU以上に期待を裏切った『ワーストチーム』と言えば、やはりトッテナムだろう。昨夏の移籍市場ではチームの2大得点源(ロビー・キーンとディミタル・ベルバトフ)をリバプールとマンUに売却。10月には1年前に招聘したばかりの指揮官(ファンデ・ラモス)を解雇し、年明けには再びキーンを買い戻すなど、シーズンを通して経営陣の「迷断」に振り回され続けた。 

 経営陣の酷さではニューカッスルが断トツだが、サポーターが味わった落胆の大きさではトッテナムが上回る。ニューカッスルの信者は、いつかは最悪の事態(降格)に陥るかもしれないと不安を覚え続けていたが、トッテナム信者はトップ4入りも夢ではないと希望に胸を膨らませていた。しかしプレミアの最終順位は8位。これでは非難されこそすれ、評価など得られるはずがない。

ベスト&ワーストゲーム――サポーターにとっては悪夢?

 次は『ベストゲーム』。このカテゴリーには、不安視されたトップ4からの転落を回避したアーセナルと、念願だった優勝争いへの本格参戦が実現したリバプールの健闘を讃えて、4月21日の直接対決を選ぶことにしよう。アンドレイ・アルシャビンのハットトリック+1(4ゴール)、ロスタイムでリバプールが追いつくという劇的な展開、そして4-4の派手な撃ち合い。大味といえば大味だが、一般のファンにとってはかなりエンターテイメントに富む試合となった。

 もっとも、両チームのサポーターにとっては一種の『ワーストゲーム』であったかもしれない。平日の夜に車で片道約5時間もかけてリバプールに行脚したアーセナル信者は、2度のリードをふいにした守備陣のふがいなさに腹を立てたはずだし、リバプール側は、ホームで引き分けたことによりマンU追撃の勢いを削がれる形になってしまった。

【次ページ】 ベスト&ワーストプレーヤー ──安定していたランパード。

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