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独断と偏見で選ぶ、
プレミア'08-'09のベスト&ワースト。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byAction Images/AFLO

posted2009/07/01 06:01

独断と偏見で選ぶ、プレミア'08-'09のベスト&ワースト。<Number Web> photograph by Action Images/AFLO

14歳のユース時代からマンチェスターUでプレーし続けるギグス。ベッカム、ネヴィル兄弟、スコールズらと黄金期を築いた後も、C・ロナウドらと共に活躍し続けてきた

ベスト&ワーストプレーヤー ──安定していたランパード。

 個人部門では、我がチェルシーのフランク・ランパードに『ベストプレーヤー』の称号を与えたい。チーム内にずば抜けた活躍をした選手がいない場合には、安定して力を発揮した選手が評価されて然るべきだ。この点で、代表戦を含めれば60を越える数の試合をこなしつつ、MFながらまたしても得点数を20点台に載せたランパードを凌ぐ選手はいない。

 シーズン前半のチェルシーは、フィル・スコラーリがサンバのリズムを奏でてもFW陣は踊らず、DF陣も足並みを乱すだけという状況だったが、それでもランパードの足捌きは乱れなかった。スコラーリの後を継いだフース・ヒディンクが、FAカップを置き土産にすることができたのも、決勝でランパードが決めた見事な逆転ゴールのおかげだといえる。

 対照的に『ワーストプレーヤー』の汚名を甘んじて受け入れるべきは、アーセナルのCFエマニュエル・アデバヨール。数字の上では合計16得点を挙げたが、CLのマンU戦をはじめ、ライバル勢との大一番では結局ノーゴールに終わった。しかも、昨夏には移籍を仄めかして年俸アップを取り付けたのだから、自軍のサポーターからブーイングを浴びるのは避けられない。新しいユニフォームの広告に起用されなかったことから判断するに、クラブの上層部にも見切りをつけ始めた人間がいるようだ。

特別賞──いぶし銀の技が光った、マンUの35歳。

 最後に『特別賞』をライアン・ギグスに贈ろう。PFA(選手協会)による年間最優秀選手賞は、斜陽のベテランに同情票が集まった結果だとも考えられるが、マンUの35歳には「さすが」と思わされる部分もたしかにある。

 たとえば昨年10月のウェスト・ブロムウィッチ戦(4-0)での88分。すでに勝敗が決していたにもかかわらず、13歳も年下の相手FWを80m近く追走して失点を防いだ勇姿は、相手陣営からも「プロ中のプロ」と絶賛された。PFAの表彰式から間もない5月初旬のミドルズブラ戦(2-0)では、「年間最優秀選手とは笑わせるぜ!」というチャントで相手サポーターに野次られていたが、DFの股間を抜く先制ゴールを決めて雑音を封印。ミドルズブラ信者が陣取るスタンドに、軽く手まで振ってみせた。これぞまさにベテランの味だ。

 ギグスのような選手がチームにいれば、住宅を買えるだけの資金を観戦費用につぎ込んだミドルズブラの信者が、降格に涙をこぼすようなこともなかったかもしれない。

 しかし来シーズンも、この信者は「スタジアム詣」を繰り返すのだろう。そう、いつの時代も『真の特別賞』に相応しいのは、健気な「信者(サポーター)」自身なのである。

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