自転車ツーキニストのTOKYOルート24BACK NUMBER
3・11以降の初心者ツーキニストへ。
通勤を娯楽に変える特別TIPS。
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2011/05/21 08:00
最近では通勤電車内の公共広告にまで自転車通勤の勧めが!
通勤に万全を期した上で……道草はいかが?
10年前の私は「道草といえば銭湯」とばかり、いやー、銭湯をめぐっためぐった。
戦前からあるモダンな洋風銭湯、昭和30年から40年代築に多い大規模仏閣風、昭和50年代末からのいわゆるスーパー銭湯。それぞれにさまざまな意匠があり、私にはたいそう面白い道草だった。そうした道草の末に本を一冊書いてしまったくらいだ(ハヤカワ文庫NF「自転車とろろん銭湯記」)。
それ以外にも、ちょっとした東京の歴史を探ってみたり、小さな坂を発見してみたり、会社帰りの道草には何だか味わい深い発見がある。
別段、何でもいいのだ。
たとえば現在の私、銭湯マイブームが過ぎて(今でも好きではありますが)の昨今。2人目の子供が産まれたばかりの頃、カミさんが岐阜の実家に帰り、束の間(2カ月程度)の独身生活を謳歌していたことがあった。
いやー、これは楽しかったね。
帰りは道草し放題。単純に夕食はどこに食べに行ってもいいわけだ。会社の同僚なんかと赤坂で食べるのも悪くはないが、帰宅ルートを開拓しつつ、定食屋、ラーメン屋、蕎麦屋、カレー屋、「○○国料理」屋、ほかの外食店を色々めぐる。
「こんなところにこんな店が!」なんて、意外な発見などもあり、新たな味に出会い、新たな人に出会い、もうこれは楽しいというか、面白い。特に「○○国料理」屋については、私の帰宅ルート上からちょっと外れると「ベラルーシ料理屋」「ペルー料理屋」「ネパール料理屋」なんていうマニアックな店もあって、日々驚きでもあった。
で、適度に食べたら、今度は自宅近くの酒場に寄るわけだ(たまに、です。←カミさんへ)。
「道草料理屋」と「押して帰れる飲み屋」を見つけろ!
酒を飲んだら自転車運転厳禁だから、単純に「押して帰れる範囲」が、飲み屋探しエリアとなる。
これがまた悪くない。地元密着感というか、「へい、毎度らっしゃい」感というか。「自転車を押していけるエリア」すなわち自宅からの徒歩エリアにも、知らない飲み屋、味わいスポットが山ほどある。
いわば「道草料理屋発見」は、旅の楽しさであり、「押して帰れる飲み屋発見」は、ご近所さんの楽しさなのだ。
カミさんも子供もいない、めくるめく60日。
私の場合、その日々は終わってしまったわけだけど、独身者には、これからでもできる。しかも毎日でもできる。羨ましい。いや、今現在の生活に不満があるわけではないんだが(←カミさんへ2)。
というか、電車じゃできないぞ。こうしたアグレッシブな道草は。じつはクルマでもしにくい。クルマは、はっと停まったり、駐車スペースを探したりするのが、必ず億劫になってしまうから。
あれ、と、思ったら、さっと停まれる、こっちには何が? と思ったら、かなり足を伸ばせる。その二つの両立は、自転車でなくてはできない。