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2010年の星たち。 

text by

熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

PROFILE

posted2006/07/24 00:00

快進撃を支えた、ドイツの若手たち。

 予想外の躍進を見せたドイツも、若い力の台頭が印象に残った。ドイツのファン何人かに、「いちばん凄い若者は?」と尋ねると、その半数以上が「ポドルスキ!」と答えた(若手に限らなければクローゼが一番人気。宇宙人のように思っている人もいる)。パワフルな左足を持つ21歳は、エクアドル戦とスウェーデン戦で貴重なゴールを決め、チームを活気づけた。

 機を逃さない左足でのフィニッシュがポドルスキの魅力だが、巧みなポストプレーもドイツの攻撃には欠かせないものだった。ゴールに背中を向けながら左足でトラップすると、細かくボールを動かしながら敵のマークから逃げ始め、ダイブするように抜け出しては面白いようにフリーキックを獲得。倒されなければ、左サイドのラームやシュバインシュタイガーに正確なミドルパスを送り、厚みのある攻撃を演出した。

 ポドルスキは'04年、所属するケルンが2部落ちするという屈辱を味わった。そのことが本大会のパフォーマンスにも影響するのではと危惧されたが、結局は杞憂だった。むしろ、悔しさをプラスの力に転換した。

 そうした印象を、彼の地元でもあるケルンからやって来たサポーターに伝えると、

 「そうなんだ、そうなんだよ!― あいつは強いんだよ!」

 と物凄い勢いで握手された。

 一度は落ち込んだ気持ちをふたたび奮い起こすことができたのも、彼が若く、加えて地元で戦えるという強みがあったからだろう。このポドルスキを筆頭に、左サイドのラーム、センターバックのメルテザッカー(けっこう上達した)、控えの切り札オドンコールなどがドイツの躍進を支える力となった。

 このポドルスキとともにストライカーとして印象に残ったのが、スペインのフェルナンド・トーレスだ。10代のころから大器と呼ばれていた彼は、2年前のユーロでファンを深く失望させたが、あれから2年、ついに能力を開花させた。物足りない成績で終わったスペインだが、一部で優勝候補に挙げられたのもトーレスが殻を破ったことが大きい。ブトラゲーニョ以降のスペインはいつも、ストライカー不足に泣いてきたからだ。

 トーレスは万能型のストライカーだ。サイズがあり、空中戦にはめっぽう強い。懐が深く、密集の中で手数をかけずにフィニッシュに持ち込むことができる。ウクライナ戦の4点目は、きっかけとなったプジョルのターンが話題になったが、トーレスの右足ボレーもまた見事だった。こうしたエリア内での強さや手際のよさはフランスのトレゼゲを彷彿とさせるが、トーレスの活動範囲はゴール前だけにはとどまらない。

 3トップ気味で戦ったスペインにおいては、サイドからの崩しでも力を発揮した。大股で次々とタックルを飛び越えていくドリブルは迫力があり、フランス戦でもPKになってもおかしくないような突進を見せた。

 予期せぬ早期撤退を強いられたスペインだが、19歳のセスクにセルヒオ・ラモス、レジェスなど、これからの選手が多い。気が早いかもしれないが、2年後のユーロでは優勝候補の一角に挙げられることだろう。

【次ページ】 最後まで残ったのは、フランスが誇る新鋭。

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