欧州CL通信BACK NUMBER
“赤い悪魔”に付け入る隙はあるか?
シャルケがマンUを逆転する可能性。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2011/05/04 08:00
欧州CL準決勝シャルケvs.マンUの1stレグの入場シーン。完敗となったこの試合後、「初めてベスト4の舞台に立って、この人(朴智星)はずっとこの舞台でやっているんだ、スゲェなと思いました。(中略)長友さんに任されているので、僕がここで諦めるわけにはいかない」と語った内田
「サッカーの世界では何が起こっても不思議ではない」
不利な立場で大一番に臨むはめになったチームの常套句だ。シャルケのラルフ・ラングニック監督も、ホームでマンチェスターUに敗れた4月26日にこのセリフを口にした。
しかし、中立的な立場でオールド・トラッフォードでのリターンマッチを考えれば、「無理なものは無理」と言わざるを得ない。
0対2という第1レグの結果だけを見れば、第2レグでシャルケが早々に1点を返すことで、流れが変りかねないようにも思われる。だが実際には、4月26日の試合は……CL準決勝とは思えないほど一方的な内容だったのだ。
開始早々の3分にウェイン・ルーニーがシュートを打ってから、後半ロスタイムにナニがドリブルで仕掛けるまで、ボールはほぼ一方通行でマンUからシャルケのゴールへと向っていた。マヌエル・ノイアーが好セーブを連発していなければ、前半の時点で最低でも0対3となっているべき試合だった。
奇跡に近い逆転勝利を夢見るシャルケとしては、格上であるマンUの慢心に勝機を見出したいところだろう。アウェイゴール2点のリードを奪ったマンUが、決勝への切符は既に頂いたとばかりに攻撃の手を緩めてくれればしめたものだ。
だが、どうやらそれも望み薄と思われる。マンUが、第2レグ直前のプレミアリーグ戦での反省を生かさないはずはないからだ。
5月1日のアーセナル戦に敗北したマンUに、慢心は一切無い。
マンUは、5月1日のアーセナル戦で敗れた。
アウェイゲームということもあったのだろうが、いつになく立ち上がりからラインが低く、敢えてアーセナルに攻めさせているようだった。要所を押さえて守ってはいたが、後半にリードを奪われると、終盤の反撃も虚しく0対1で逃げ切られた。
もちろん、シャルケとの第2レグでは、同じスコアで敗れたとしても決勝進出に影響はない。だが、マンUは、その4日後にチェルシーとのリーグ戦を控えている。万が一の逆転負けは想像し難いとしても、アーセナル戦のような後半のあたふたは、負ければ首位を譲るプレミア頂上対決を目前に、精神衛生面でも体力面でもよろしくない。加えて、シャルケの前線には、数少ないチャンスを物にできるラウール・ゴンサレスがいることも忘れてはならない。