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ドロー決着の“ラリー・クラシコ”初戦。
自信を得たモウリーニョの秘策とは?
 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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posted2011/04/18 12:15

ドロー決着の“ラリー・クラシコ”初戦。自信を得たモウリーニョの秘策とは?<Number Web> photograph by Getty Images

試合中、ブスケッツの手をとって何かを話しかけるモウリーニョ。試合後、アルビオルのファウルによるレッドカード&退場という審判の判定に対して大いに不満を述べることになる

 リーガ・エスパニョーラ、コパ・デル・レイ決勝、CL準決勝2試合と、僅か18日間のうちに行われる4度の直接対決で3つのタイトルを争うことになったバルセロナとレアル・マドリー。史上初めて実現した「ラリー・クラシコ」の第1戦、サンティアゴ・ベルナベウで行われたリーガの首位決戦は1-1のドローに終わった。

 引き分けでもOKのバルサと、勝っても逆転優勝の望みが薄いマドリー。既に勝点8差がついているため、リーガのクラシコは4連戦の中で最も重要性が低いものと見られていた。しかし、両指揮官の考えは違った。この第1戦の結果と内容が残る3試合の行方を左右する。そんな2人の必勝を期す意気込みは両チームの先発メンバーを見るだけで伝わってきた。

昨季バルサを下したインテルに似た戦術をとったモウリーニョ。

 昨年11月のクラシコでマドリーは、2列目にC・ロナウド、エジル、ディマリアを並べた4-2-3-1のベーシックな布陣でバルサに真っ向勝負を挑み、結果として0-5という屈辱的大敗を喫した。

 そこでモウリーニョは今回、トップ下のエジルを削ってセンターバックが本職のペペを3ボランチの中央に配置。中盤の守備力を強化してバルサの攻撃をしっかり受け止め、1トップのベンゼマと両サイドのC・ロナウド、ディマリアのスピードを生かしたカウンターを仕掛けるという、昨季のCL準決勝でバルサを下したインテルに似た戦術を採用してきた。

 対するグアルディオラは懸念されていた最終ラインのスピード不足を解消すべく、センターバックに3カ月ぶりの復帰となるプジョルをいきなり先発起用する賭けに出た。また同ポジションでのプレーが予想されたブスケッツは本来のピボーテに戻し、シャビ、イニエスタと共に中盤を構成。この3人を中心に安定したボールポゼッションを保つことで、相手にカウンターの機会を与える回数を最小限に抑えることを意識させた。

 鋭いカウンターの牙をちらつかせながら相手の攻撃を待ち受けるマドリーに対し、バルサも0-0で満足と言わんばかりに低い位置でボールを動かし続け、なかなか前に出てこない。そんな我慢比べの状態が続いた前半を終えると、試合は後半開始早々に動いた。

アルビオルのレッドカード&PKで万事休すと思われたが……。

 C・ロナウドの直接FKがポストを叩いた直後の51分、自陣深くでボールを持ったブスケッツが前線に縦パスを送る。これをペナルティーエリア内で受けたビジャがマーカーのアルビオルに先んじて左側に抜けだしかけると、アルビオルはたまらずビジャを掴み倒してしまう。ムニス・フェルナンデス主審は迷わずペナルティーマークを指さした後、アルビオルにレッドカードを提示。このPKを決めたメッシが対モウリーニョ戦無得点のジンクスを破った瞬間、マドリーは10人で1点のビハインドという絶体絶命の状況に追い込まれた。

 この時点で世界中のクラシコ観戦者のほとんどがバルサの勝利を確信したことだろう。それはバルサの選手達も同様だったと思う。グアルディオラがバルサの監督に就任して以降、クラシコは5戦5敗と辛酸を舐め続けているマドリーは、決まってバルサにリードを許した瞬間に打つ手がなくなっていたからだ。

【次ページ】 危機的状況でモウリーニョが繰り出した“プランB”。

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