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新指揮官が描く「現実的サッカー」で、
浦和レッズは栄光を取り戻せるか?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/02/25 10:30
1997年から2000年までを選手として浦和レッズで過ごしたゼリコ・ペトロビッチ監督。いくつかのチームでの監督を経て、昨季はプレミアリーグのウエストハムでアシスタント・マネジャーとして活躍していた
フィンケ時代の反動か、安易なロングボールが目立つ。
ただし、問題は、新しいやり方がまだまだ成熟してないことだ。
いくら現実的なサッカーをするといっても、ロングボールばかり蹴ればいいというものではなく、臨機応変にパスをつないで、相手を揺さぶる必要がある。おそらくペトロビッチ監督も、ポイントを伝えただけで、まさかロングボール一辺倒になるとは思っていなかっただろう。だが、プレシーズンマッチの大宮戦において、浦和はパスコースが限定されると、すぐにロングボールを選択する傾向が見られた。
ボランチの柏木陽介は、課題をこう指摘した。
「(チームとして)狙いはサイドの裏というのがもちろんあるけど、もっとメリハリをつけなきゃいけない。ロングボール1本で裏というのは、なかなか難しい。5本で1本通るか、通らないかくらい」
昨季フィンケ監督は「意図のあるロングパス」は奨励していたが、相手のプレスから逃げるようなロングボールやクリアは減らすように指示していた。だが、今季その制限がなくなったことで、安易にロングボールを選択しすぎているように見えた。
指揮官の意図を解釈し、具現化するのは選手の役目である。
大宮戦の前半は、柏木が起点になって、昨季のようにショートパスとフリーランニングの連続で相手を崩す場面が何度かあった。たとえば柏木の縦パスを受けた原口が、ドリブルで切れ込んでシュートを放った前半8分のシーンだ。
柏木は言う。
「中央にパスを入れるから、相手が絞ってサイドが空く。そのへんをもっとやっていかなきゃいけないと思います」
ペトロビッチ監督が描くイメージを頭に入れつつ、それを最大限に発揮するためにどんなプレーをするべきかを考えるのは、選手たちの責任でもある。大宮戦の浦和には、自由な発想が欠けていた。
2002年にチャンピオンズリーグで準優勝したレバークーゼンは、まず戦術家のダウム監督がベースを築き、選手たちがそれを生かしながら、トップメラー監督の下で臨機応変にプレーしたことが成功につながった。
選手たちに今求められているのは、新監督の指示をうまく咀嚼し、この2年間に体に覚えさせてきたことといっしょに消化することではないだろうか。