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藤井聡太が保持・棋聖戦賞金が“5000万円に増額”も王将戦は…「低迷の新聞業界。協賛金に重きを置くべきか」棋士が見る“主催者問題”の背景
posted2025/04/27 06:02

藤井聡太王将と永瀬拓矢九段が対戦した2024年度の王将戦。今年度からは「日本将棋連盟」の単独主催となった
text by

田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
Keiji Ishikawa
昨年9月に創立100周年を迎えた日本将棋連盟は、新聞社などから得るタイトル戦の契約金が長年にわたって主要財源になり、テレビ局や企業、地方自治体ともプロ棋戦の契約をしている。そうしたビジネスモデルによって、安定した運営を続けてこれた。
しかし今年1月、連盟が王将戦を初めて単独主催する事態となった。それには新聞社の苦しい経営状況が背景にあったようだ。タイトル戦の運営システム、連盟と新聞社の過去の葛藤、賞金増額が話題になった棋聖戦など今後のタイトル戦の在り方などについて田丸昇九段が解説する。
王将戦の主催者変更…“コスプレ写真”は継続のようだが
藤井聡太王将(竜王・名人・棋聖・王位・棋王・王座と合わせて七冠)と永瀬拓矢九段による、ALSOK杯第74期王将戦七番勝負第1局が始まる5日前の1月7日。日本将棋連盟は王将戦の運営体制を主催三者(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟)で協議の上、第75期から連盟が単独で主催すると発表した。
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メディアの関連記事によると、連盟は王将戦をさらに発展させるために主体的に運営したいと、毎日とスポニチに申し出て合意に至ったという。毎日とスポニチは第75期王将戦から、特別協力として報道面で力を尽くす。スポニチが長期に掲載している、七番勝負の勝者が披露して評判の「コスプレ写真」も継続するようだ。
タイトル戦の運営システムについて、仮に……
〈P新聞社がX棋戦を主催して、将棋連盟に1億円の契約金を支払う〉
というモデルケースを基に解説する。
契約金のうち約20%が連盟の運営費。P新聞社との諸連絡、X棋戦の対局での諸経費、連盟事務局の人件費や事務経費の一部に充てられる。優勝賞金は棋戦によって違い(10~15%)、前者なら1000万円。残りの約65~70%は棋士の対局料、参稼報償金などとして支払われる。
協賛金は“上積みでなく肩代わり”では
私こと田丸は1989年から1995年まで、連盟の理事に在任した。当時と現代で基本的なシステムはあまり変わっていないと思う。
なお竜王戦は最高額の優勝賞金(前期は4400万円)を公表しているので、契約金総額をおよそ推定できる。ほかのタイトル戦の優勝賞金は、4000万円(それに加えて特別賞1000万円)に増額されると発表された棋聖戦以外は未公表である。
王将戦の契約金は毎日新聞社が大半を負担してきた。