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藤井聡太が保持・棋聖戦賞金が“5000万円に増額”も王将戦は…「低迷の新聞業界。協賛金に重きを置くべきか」棋士が見る“主催者問題”の背景
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田丸昇Noboru Tamaru
photograph byKeiji Ishikawa
posted2025/04/27 06:02

藤井聡太王将と永瀬拓矢九段が対戦した2024年度の王将戦。今年度からは「日本将棋連盟」の単独主催となった
そのほかに警備会社のALSOKが特別協賛、囲碁将棋チャンネル、立飛ホールディングス、名古屋鉄道などが協賛している。協賛金の合計額は不明だが、毎日の契約金に上積みしたのではなく、肩代わりしたのが現状のようだ。ほかのタイトル戦も同様で、毎年発表される「賞金・対局料ランキング」の水準が30年前とほぼ同じことから推認できる。
将棋連盟が単独主催する第75期王将戦では、賞金・対局料は従前どおりで、諸経費を含めて連盟の持ち出しとなる。ただ協賛社を募って増額となれば連盟の負担は軽減し、さらなるグレードアップも期待される。まさに連盟の腕次第だ。
主催者である“新聞業界の長期低迷”
この状況の背景には、新聞業界をめぐる業績の問題がある。
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日本新聞協会が2022年12月に発表した資料によると、スポーツ紙を除く一般紙の総発行部数は3000万部を割り込み、2000年に比べて約4割減になったとのこと。発行部数だけでなく、広告料収入の減少で、新聞業界全体の業績が下落している。ネット時代への移行、活字離れ、読者の高齢化などによって、今後も長期低迷が想定されるという。
将棋連盟は前述のように、新聞社などから得るタイトル戦の契約金が主要財源である。当然ながら影響を受けやすいが、現在のところ大きな変化はないという。
しかし、囲碁界で対岸の火事とは思えない事態が起きていた。
「本因坊」は江戸時代初期から引き継がれている囲碁界の名跡で、多くの名棋士を輩出した。毎日新聞社はその由緒ある本因坊戦を戦前から主催してきた。囲碁の棋聖戦、名人戦と並んで「大三冠」と呼ばれたものだ。
しかし毎日は2年前、本因坊戦の契約金と棋戦システムを大幅に縮小した。優勝賞金を2800万円から850万円に減額し、8人のリーグ戦で挑戦者を決める方式を、16人のトーナメント制に変更。さらにタイトルを争う2日制七番勝負を、1日制五番勝負にした。それによって本因坊戦は3番目だった序列から、棋聖戦、名人戦、王座戦、天元戦に次ぐ5番目の序列となった。新聞業界はどの社も経営状況は苦しいが、毎日はとりわけ顕著だったといえる。将棋連盟が今年度から王将戦を単独主催した背景にもなった。
半世紀前の連盟と朝日との名人戦契約金問題とは
2008年から、毎日新聞社と朝日新聞社は将棋の名人戦七番勝負の運営を共催している。その毎日がタイトル戦の王将戦をずっと主催してきたのはなぜか……。
それは約50年前に起きた名人戦契約金問題が関連している。