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藤井聡太が保持・棋聖戦賞金が“5000万円に増額”も王将戦は…「低迷の新聞業界。協賛金に重きを置くべきか」棋士が見る“主催者問題”の背景 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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posted2025/04/27 06:02

藤井聡太が保持・棋聖戦賞金が“5000万円に増額”も王将戦は…「低迷の新聞業界。協賛金に重きを置くべきか」棋士が見る“主催者問題”の背景<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

藤井聡太王将と永瀬拓矢九段が対戦した2024年度の王将戦。今年度からは「日本将棋連盟」の単独主催となった

 当時の毎日は経営難に見舞われていて再建段階で、億単位の金額がかかる名人戦の主催は難題だった。しかも25年にわたって主催してきた王将戦の問題もあった。

 その後、戦後まもない頃に名人戦を担当した毎日の元記者が相談を受けると、幹部をこう説得した。

「名人戦はどんな無理をしても引き受けるべきだ。高い買物をしても、紙面で効果を上げれば収支はいつかプラスになる」

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 そうした陰の動きや大山副会長が熱心に働きかけたことで、毎日は名人戦を主催する意向を固めた。

 1976年9月、毎日は名人戦の主催を正式に発表した。懸案の王将戦は、毎日系列のスポーツニッポン新聞社が引き継ぐことになった。当時の毎日の社内には「名人戦を新生毎日のセールスポイントに」との空気がみなぎったという。

 そこから30年後の2006年に起きた名人戦の共催問題では、王将戦は存続が危ぶまれたが――連盟と新聞社の過去の葛藤の中で生き延びてきたのである。

企業からの協賛金に重きを置くべきか

 新聞社が将棋連盟に多額の契約金を支払ってプロ棋戦を主催するのは、紙面で独占掲載することが原則だ。ただネット時代ではタイトル戦の棋譜はリアルタイムで速報され、将棋の内容は観戦記の掲載前に専門誌などで詳しく解説される。現代の新聞社の役割は、日本の伝統文化として将棋界を支援する「メセナ」の意味合いがあると思う。

 その新聞業界が低迷している状況で、連盟は新聞社に頼らずに企業からの協賛金に重きを置くべきかという問題がある。前述した棋聖戦の賞金増額も含めて――今後のタイトル戦の在り方は、曲がり角にさしかかったといえる。〈将棋特集:つづく〉

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