将棋PRESSBACK NUMBER

「寿命が縮まった気がするんです」名人・藤井聡太や永瀬拓矢だけでない死闘…順位戦の過酷な現実を高見泰地が語る「永瀬さんのおかげですね」 

text by

大川慎太郎

大川慎太郎Shintaro Okawa

PROFILE

photograph byShintaro Okawa/Nanae Suzuki

posted2025/04/20 06:00

「寿命が縮まった気がするんです」名人・藤井聡太や永瀬拓矢だけでない死闘…順位戦の過酷な現実を高見泰地が語る「永瀬さんのおかげですね」<Number Web> photograph by Shintaro Okawa/Nanae Suzuki

インタビューに応じてくれた高見泰地七段(左)。永瀬拓矢九段らとの研究会など、過酷な戦いを強いられる順位戦に向けての準備を明かしてくれた

 対山崎戦は関西遠征だったが、翌日は始発の新幹線で帰京した。疲れた身体に鞭を入れて向かったのは、「永瀬研」だった。

「この日はメンバーが永瀬さん、増田康宏さん、佐々木大地さんでした。代打を出すとその人が強くなるから嫌なんです(笑)。それなら少し無理をしても自分が行って強くなりたいというしたたかな気持ちもありますね」

 こう言って高見はニヤッと笑った。半分は冗談、半分は本気だろう。

佐藤康光に惨敗も3勝1敗…A級を意識できたが

ADVERTISEMENT

 3局目の相手は、研究会で教わっている大先輩の佐藤康光九段だった。ここで高見は初黒星を喫する。

「惨敗でした。練習でも教えていただいているので、何となく戦型は絞れて予想通りになったんですけど。佐藤先生が序盤で早めに工夫をされて、それに対して2択で悩みました。40分悩んだ結果こっちかなって前向きな手を指したら、それがよくなくて負けてしまった。自重するべきだったんですけど、前に向かうというのは将棋において大事なことであると同時に、うまくいかないと悪くなりやすい。前期の順位戦で唯一、一瞬もいいところがなく負けてしまった将棋です」

 2勝1敗になったが、それでも4回戦の澤田真吾七段戦を制して3勝1敗となった。この時点ですでに全勝はおらず、首位タイの成績である。仮にこのペースを維持できれば9勝3敗で昇級ラインに届く。1ミリの油断もなかったが、眼前には輝かしい未来が広がっていた。

 だが、ここがA級昇級を本格的に意識した最後の瞬間だったかもしれない。〈つづく〉

#2に続く
「精神的にバグりました。自分が沼に」「嬉しさと畏敬の念、戸惑いが」“憧れの羽生善治戦”を筆頭に…タイトル経験者が語る“激痛の順位戦”

関連記事

BACK 1 2 3
#高見泰地
#永瀬拓矢
#羽生善治
#佐藤康光
#糸谷哲郎

ゲームの前後の記事

ページトップ