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「明日、何番でいく?」日本ハム・松本剛が叱られた新庄剛志監督のDM…申し子が語る“新庄野球の真髄”「できないと思うことは結構ある。でも…」
posted2025/04/19 11:12

ホーム最終戦セレモニーで笑顔をみせる日本ハム選手会長の松本剛と新庄剛志監督
text by

酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph by
SANKEI SHIMBUN
新庄監督からのDM
松本剛は新庄剛志監督から叱られたことがある。
「大航海」をスローガンに掲げたファイターズは2024年、6月に入ると嵐のなかでの航行がつづいた。交流戦の後、黒星が重なって一時は5位まで転落したが、7月後半に入ると持ち直した。だが、松本剛のバットは湿ったままで、22年の首位打者に輝いた実力者の打率はついに2割5分を下回ってしまった。
新庄からインスタグラムのDMが届いたのは、そんなときだった。
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《明日、何番でいく?》
俊足巧打が売りの松本剛は安打こそが自らの価値を示すよりどころだった。
だが、ノーヒットが何試合もつづいて自信を失いつつあった。
松本剛は返信した。
《下位打線がいいと思います》
すると新庄から返事が届いた。
《お前がそんな気持ちじゃチームは勝てない》
メッセージを受け取った松本剛は弱気になっていた自分が恥ずかしくなった。
そして、DMはこうつづいていた。
《1番でいくぞ》
新庄のDMは打順の希望を聞くというより、鼓舞しようとしたのだろう。松本剛はプロ13年目の24年、31歳のシーズンを迎えていた。同い年の同期入団で、ホークスに移籍していった近藤健介からファイターズの選手会長を受け継いで2年目。チームリーダーは不調のときほど仲間たちにその背中を見られている。白い波頭を切り裂く帆船の舳先として、常に先頭に立たねばならないのだ。松本剛は思い直した。
「新庄さんはどんなときでもプラス思考、ポジティブです。どんな状況に置かれても前を向いて、たとえスタメンを外れたとしてもベンチでやるべきことが絶対にあるということに気づかせてもらいました」
ファイターズが生まれ変われた理由とは
ファイターズは前年まで2年連続最下位に沈むなかでも力をつけ、新庄体制3年目の24年に結果となって表れた。7月は12勝7敗2分、8月は16勝9敗1分と安定した戦いを進め、9月も粘りぬいて6年ぶりのクライマックスシリーズ(CS)進出を果たした。
そして、CSファーストステージのロッテ戦を勝ちぬいて喜びを分かちあい、ファイナルステージのホークス戦に完敗して涙に暮れた。彼らはいつの間にか途轍もない熱を発するようになっていた。
なぜ、ファイターズは生まれ変われたのか。