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「なんでも聞くけど、ひとつだけ条件がある」川崎宗則がマドン監督に提案した驚きの“条件”「一番高いワインを飲ませてくれたら…」《NumberTV》

posted2025/04/17 11:01

 
「なんでも聞くけど、ひとつだけ条件がある」川崎宗則がマドン監督に提案した驚きの“条件”「一番高いワインを飲ませてくれたら…」《NumberTV》<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

「明るく、前向き。誰からも愛されるエンターテイナー」 今もグラウンドに立つ川崎宗則(43歳)がNumberTVで自らの「挫折地点」について明かした

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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Hideki Sugiyama

 明るく、前向き。誰からも愛されるエンターテイナー。 今もグラウンドに立つ川崎宗則(43歳)は、どんな困難も力に変える。「Sports Graphic Number×Lemino」制作のドキュメンタリー番組NumberTVから特別記事を掲載する。<全2回の後編/前編も公開中>

僕ほど監督室に呼ばれた選手はいない

 川崎は5年、メジャーとマイナーの間を行き来した。つらかったこともあったはずだが、それを笑いに変えて話してくれる。

「日本人選手で、僕ほど監督室に呼ばれた選手はいないでしょう。これは僕の誇りです(笑)。マイナーの監督室では『カワ、昇格だぞ!』と朗報をもらって握手し、メジャーの監督室では『明日からマイナーに行ってもらう』と何度か告げられ、『グッドラック』と言われて握手。それだけ監督とのコミュニケーションは密でした(笑)」

 マイナーへの降格は、ひとつの挫折である。それを申し渡される時の「気配」にも敏感になった。

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「だいたい、ベンチコーチが『カワはいるか?』とクラブハウスの中を探し始めるんです。僕は『ノー、ノー』とか言いながら逃げるんですけど、監督室に行くことになります。ああ、またマイナーかと思うんですけどね」

マドン監督に提案「ひとつだけ条件がある」

 それでも、ただでは起きないのが川崎だった。16年、カブスがワールドシリーズを制したシーズンには、こんなことがあった。

「当時の監督はジョー・マドンでした。のちにエンゼルスに移って、大谷翔平選手を二刀流で起用した監督です。ジョーから監督室に呼ばれた時に、『カワ、ちょっと私の言うことを聞いてくれ』と言われて、あえてジョーの話をさえぎって、『分かった。なんでも言うことは聞くけど、ひとつだけ条件がある』と話したんです」

 川崎は監督室にあるワインセラーを指さして、そのなかの一番高いワインを飲ませてくれたら、なんでも言うことを聞くとマドン監督に話したのだ。

「ジョーは喜んで飲ませてくれましたよ。いやあ、美味しかったんだろうけど、味は覚えてません(笑)。この前、ドジャースとカブスの東京シリーズで、当時のアシスタントGMと久しぶりに再会したんですが、『監督室でワインを飲んでいった選手は、後にも先にもカワだけだ』と言ってました(笑)」

 挫折は、周囲にも微妙な変化を与える。それはポジティブなものばかりではない。しかし、川崎宗則は自らの挫折をポジティブな空気に変えられる稀有な能力を持った人である。気づかいの人だからこそ出来る芸当。だからこそ、彼は愛される。

前編から続く>

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