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「3度目のルーキーという感じ」51歳のイチローが明かした米野球殿堂入りへの想い「特別な才能があったわけでもない選手が今ここにいる」《独占インタビュー》
posted2025/02/13 17:00

日本人初の米野球殿堂入りを果たしたイチロー(51歳)が、その想いを明かした
text by

石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Naoya Sanuki
【初出:発売中のNumber1114号[スペシャルインタビュー]イチロー「日本人らしさを貫いて」より】
それはそれは特別な空間でした
――日米での野球殿堂入り、おめでとうございます。今回、野球殿堂があるニューヨーク州クーパーズタウンを訪れたのは8度目とのことですが、初めて行ったときのことは覚えていますか。
「もちろんです。メジャー1年目を終えた2001年のオフ。その日は偶然にも新人王が決まる日で、その報せを野球殿堂で受けました。野球殿堂には博物館が併設されているんです。地下には常時展示されていない貴重なものがたくさん保管されていて、その中を案内してもらったんですが、それはそれは特別な空間でした。あのときはジョー・ジャクソンのバットやスパイクを見せてもらったことをよく覚えています」
――ルーキーとしての最多安打、233本の記録を1911年に打ち立てた“シューレス”こと、ジョー・ジャクソンですね。
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「だから『あ、シューズあるんだ』って思いました(笑)。考えてみればずっとスパイクを履かずにプレーしていたはずがないですよね。どうして“シューレス”なんだろうと思って訊いたところ、スパイクが足に合わなくて、1試合だけ靴下でプレーしたのがその由来らしいです。僕が365日、毎朝カレーを食べてると思われていた話と似てますね(苦笑)。そうではないと聞かされた人が、『えっ、毎日カレーなんじゃないの?』となる。そもそもホームゲームがある日だけですから年間でマックス81日、それも2年くらいのことでした。その後はうどんや素麺を食べていた時期もありましたし、今はトーストとコーンスープです。“イチローは朝カレー”という、人が『こうあってほしい』という期待や理想ができ上がってしまうと、本当のことなんてどうでもよくなっちゃうんでしょうね。固定されたイメージって怖いです」
――“シューレス”ジョー・ジャクソンのバットを触った感じはどうでしたか。
「今まで聞いたことのない音がして、昔の素材ってすごいと思いました。触れるととにかく硬くて、とても折れそうにない。指で弾いて響きを聞いてみると、金属バットみたいな音がするんです。キーンという高い音。道具を通じて、昔の選手と対話しているような気分になりました」
3度目のルーキーという感じです
――殿堂には昔の選手のレリーフがたくさん飾られています。そこに仲間入りをするのは、どんな感覚ですか。