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「『ベイスターズ買ってくれよ』って俺が言ったんだ」マルハの球団譲渡の真実…球史を裏で動かした“ハマのドン”藤木幸夫が独白する「野球愛」
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赤坂英一Eiichi Akasaka
photograph byFujiki Kigyo
posted2025/04/02 11:22

左端が「ハマのドン」こと藤木氏。右端はかつての「ハマのプリンス」、当時監督の山下大輔。そして藤木氏の隣は…!?
譲渡先を一任された藤木氏
「それで、(球団と関係者で)正式にしっかりと役員会を開いて、(球団譲渡は横浜スタジアムの)藤木取締役、この俺に一任する、ということになったんだ。
ただし、一任する代わりに条件があると。第一が、藤木の見た目で売るとか売らないとか、ここなら間違いない、というのを決めてくれと。周りの意見なんか一切聞かないで、藤木の純粋な目で判断をしてほしいと。資本の関係がどうだとか、そんなのは一切抜きにして決めてくれと、そう言われた。
それともう一つ、横浜をフランチャイズとすること。どこか別のところへ球団を動かすとか、そういう話が多いから。横浜をフランチャイズでお願いします、と。で、俺も、うん、わかったと。それで、(水面下で)広告を出したんだ」
「藤木さんのことだから言い値でいいですよ」
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「そうしたら、真っ先に球団を買いたいと言ってきたのが消費者金融の会社だよ。あの頃は飛ぶ鳥を落とす勢いだったからな。『今度ウチにやらしてもらえれば、すぐドーム(球場)を作ります』と言われた。ドームと言えば乗ってくる、ついてくると思ったのかもしれねえけど、関係ねえからさ、こっちとしては。そもそも、消費者金融の会社にはご遠慮いただいておりますから。
フランチャイズを四国や九州へ持っていきたいという話も山ほどあったよ。大きな商社、大きな船会社から。高松へ移したいなんてねえ、ダメですよ、ダメ、ダメダメ。俺がそんなこと言ってるうちに買う相手がいなくなっちゃった。俺の出す条件がきついんでね。
そんとき、TBSの、慶応で野球をやっていたの(砂原幸雄社長=当時)にバッタリ会ったんだ。それで、『ベイスターズ買ってくれよ』って言ったら、『私でよければ買いましょう』。俺が『いくらで?』って聞いたら、『藤木さんのことだから言い値でいいですよ』と。それで決まりだった」