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長野五輪“あの金メダリスト”がアップルパイ製造の今「収穫から…大変です」 現役スキージャンパー・船木和喜(49歳)が語る「競技普及への献身」
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byWataru Sato
posted2025/03/04 11:05

アップルパイ、サクランボパイの製造・販売事業を行いつつ、スキージャンプの普及活動にも尽力する船木和喜(49歳)の今
「当初は買ったものを販売していました。でもそうすると、残るお金が少ないんですよね。それに自社商品をやっていかないと認めてもらえない業界なんだな、ということも分かってきたので」
船木の出身地である北海道余市町に「王様の工房」を設立。農家との関係を築き、収穫されたりんごやサクランボをもとにアップルパイ、サクランボパイを製造し販売している。
「それこそ収穫からやらないといけなくて、収穫、製造、販売……大変です。でもその分、残るお金は買ったものを販売していた頃より大きいです」
ジャンプ人口の減少…事業を続ける船木の思い
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この事業の出発点は先に記したように、ジャンプ少年団の活動を支えてくれる企業を探していたことにある。
船木は長野五輪後から育成の支援をしたいと考えていたという。当時からスキーの競技人口の減少は取り沙汰されており、その中でジャンプも人口が減り、競技の将来への危機が語られていた。
以前、船木はこう語っていた。
「将来50歳、60歳になったときに、同じ会話ができる仲間がいないと寂しいじゃないですか。子どもが少なくなっていけばチームが少なくなるし、チームが少なくなればコーチの雇用も少なくなる。そうなると、例えば指導が得意な後輩もいっぱいいるのに、ジャンプにかかわることができない。現場から人がいなくなっていけば、昔話ならできても、将来の話はできないじゃないですか。50歳、60歳になったときに一人ぼっちはいやだなと思って、いろいろやっているんですよ」
いちばん大変だったことは「やっぱり数字(売り上げ)ですよね」と言う。
「数字を見て、最終的にその数字を大きくするために必死に考えてきましたね」
ジャンプをしていたからこそいきた経験はあるという。
「やっぱり、何か足りないからそれを補うために行動するじゃないですか。スポーツならそれは練習だったり道具だったり指導者もあるかもしれないし、環境もそうですね。それはもう商売も全部同じですから。課題をクリアするために、その穴を埋めるために何が必要かを必死に考えて行動する。どちらも同じだと思います」