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「日本を狙った」の声も…長野五輪後のルール改正「海外は露骨」「小柄な選手は苦しかった」 船木和喜が痛感した“スキージャンプの欧州中心主義”
posted2025/03/04 11:02

今も現役を続ける五輪金メダリスト・船木和喜(49歳)が考える、スキージャンプ界のルール改正
text by

松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Wataru Sato
1998年の長野五輪で2つの金メダルを獲得したスキージャンパー・船木和喜。今も現役選手として競技を続ける船木が明かす、スキージャンプ界の“ルール改正”問題への本音とは。《NumberWebインタビュー全4回の第2回/第3回、第4回に続く》
ノルディックスキー・ジャンプではしばしば、ルールがクローズアップされる。「日本の選手が不利になるよう改正されているのではないか」という観点から、関心を集めることもしばしばある。
トップジャンパーとして世界の舞台で戦ってきた船木和喜はこの問題をどう捉えているのか。
本人に話を聞くと、ルール以前に、ジャンプの世界における、いわば“アウェーな感覚”があったという。
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「それはまあ、最初に海外に行ったときから感じてましたから。やっぱりアジア人には勝たせたくないっていうのはあるな、と。日本だと、例えば相撲は、横綱が日本人じゃなくても応援するじゃないですか。でも海外は露骨ですから。かつて戦争をやっていた歴史があるような国同士だとひどいですからね」
「欧州選手は5つ星ホテル。僕たちは安宿ですからね」
ヨーロッパこそ本場であるという意識から、どうしても、それ以外の地域の強い選手は、歓迎されざる存在となりかねない。ジャンプの選手にとどまらず、体感をもってそうした趣旨を話す選手たちはこれまでにもいた。
船木は一例をあげる。
「ヨーロッパの選手は5つ星のホテルに泊まっていて、僕たちは安宿ですからね。5階、6階建てのエレベーターなし、そういう宿に突っ込まれるんですよ。今はどうか分からないけれど、昔はひどかったですね。まあ僕たちよりもっとひどいところに泊まらされている国の選手もいましたけど」
試合のとき、万単位の観客からブーイングを浴びたという。船木の実力を認めるとともに、そこにもアウェー感が漂う。
そうした背景の中、ジャンプ競技は歴史の中でさまざまなルール改正が行われてきた。